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大切にしたい日本のしきたり、正月事始め

今年も残りわずか。師走になると一気にあわただしさが増します。最近では、古いしきたりはなくなったり、少しずつ形を変えているものもあり、“本来の意味”を知らずに行っていることもあるのではないでしょうか。

そこでここでは、古くからの正月準備のしきたりについて再確認してみましょう。本来の意味を知れば、面倒だなと思っていた正月準備にも気合いが入るかもしれません。こどものいるご家庭では、お子さんに意味を教えながら一緒に準備することで、日本の伝統行事やしきたりについて学び家族で楽しむきっかけにもなるでしょう。

師走とはいつのこと?

師走(しわす)は陰暦の12月のこと。陰暦の月呼称では、1月は睦月(むつき)、2月は如月(きさらぎ)、3月は弥生(やよい)、4月は卯月(うづき)、5月は皐月(さつき)、6月は水無月(みなづき)、7月は文月(ふみづき)、8月は葉月(はずき)、9月は長月(ながつき)、10月は神無月(かんなづき)、11月は霜月(しもつき)となります。

陰暦(太陰太陽暦、太陰暦、旧暦とも呼ぶ)とは、月の満ち欠けを基準にした暦。現在の太陽暦が使われるようになった明治6年以前までは、この陰暦が使われていました。

師走の由来は、“昔この時期に各家で師(師匠である僧)を迎え先祖供養の仏事を行ったため、師が忙しく走り回るから”“四季の終わりを意味する四極(しはつ)や、今年やることをすべて為し終える意味の為果つ(しはつ)が語源”など、諸説あります。

師走の一大行事「正月事始め」は、いつ、何をするもの?

そもそも正月にはどんな意味があるのでしょう。日本では古くから祖先の魂が田の神・山の神となり、一年の始まりに「年(歳)神様」(歳徳神・正月神とも呼ぶ)となって各家に降り福徳をもたらすと考えられています。その年神様を家族揃ってもてなすのが正月です。

「正月事始め」とは、年神様を迎えてお祝いするための準備を始めることです。地域によっても異なりますが正月事始めの日は12月13日とすることが多くみられます。月に一度の吉日「鬼宿日(きしゅくにち)」のうち旧暦の12月13日は、婚礼以外は万事に大吉とされる二十八宿(※)の鬼宿日。縁起が良いことから、江戸城ではこの日に「煤(すす)払い」をして正月準備に取りかかりました。これが庶民の間にも広がり、新暦(太陽暦)になってからも、そのまま12月13日が正月事始めの日になったものです。

※二十八宿とは古代中国で生まれた28個の星座のことで、季節の推移や天候予測、暦などに利用されていました。飛鳥時代には日本に伝来されたと言われ、日本では日々の運気を知る占いのツールとしてもてはやされました。

12月13日を中心に年の瀬になると、全国の神社仏閣などで竹竿の先に笹や藁が取り付けられた「煤梵天(すすぼんてん)」と呼ばれる道具を使って煤払いを行うようすが報道されます。各家庭でも、昔は薪や炭を使った生活だったため家の中に煤がたまり煤払いが必要でしたが、現代では囲炉裏もなくなり煤払いは不要になっています。近年では、正月事始めの煤払いは年末大掃除の意味で使われ、年末の休みに入ってから行うという家庭が多くなっています。

門松、しめ縄・しめ飾り、鏡餅などのお正月飾りは、いつ飾るもの?

門前に飾る門松は、年神様が各家に降りてくる際の目印になるもの。その飾り方は地域によって異なりますが、松には神が宿る“依代(よりしろ)”の意味があり、竹は長寿をもたらす縁起物です。そのほか、室内には、縁起のいい赤い実を付ける南天や千両、万両、生命力にあふれる梅の花などを添えます。

しめ縄の起源は、諸説ありますが天照大御神(あまてらすおおみかみ)が二度とお隠れにならないよう、天岩戸(あまのいわと)にかけた縄と言われています。禍を縛る意味があり、元々は玄関に神社などと同じような注連縄(しめなわ)を張り巡らせ、年神様をお迎えしていました。現在では簡略化した、しめ飾りや輪飾り(輪しめ)を玄関の扉に飾ることが多く見られます。しめ飾りには、縁起の良い扇や橙(だいだい)、邪悪なものを追い払う紙垂(しで)などがあしらわれます。

鏡餅は、年神様にお供えする神饌(しんせん)であります。神事で使われる神聖な鏡(青銅鏡)と同じ丸い形のため「鏡餅」と呼ばれるようになったと言われています。飾り方は地方によってさまざまですが、陰(月)陽(日)を表す大小の餅に、子孫繁栄の縁起植物である裏白(うらじろ)やゆずり葉、橙、清浄を表す紙垂、四方の厄を払う意味で紙の四方が紅で縁取られた四方紅(しほうべに)などがあしらわれます。

お正月飾りは、苦に通じる29日、一夜飾りとなる31日は避け、末広がりの八が付く28日にまでに飾るのが良いとされています。

お正月のおせちにはどんな意味があるの?

季節の変わり目などの祝いの日「節日(せちにち)」「節句」に神様お供えする料理のことを「節会(せちえ)」「御節供(おせちく)」と呼び、これが正月のおせちの語源と言われています。

おせち料理には、子孫繁栄の数の子や昆布巻き、長寿のエビ、五穀豊穣の田作り、無病息災の黒豆、金運のきんとんというようにそれぞれ意味があります。

また、めでたさを重ねるという意味で重箱に詰めるのが一般的です。5段重にするものもあり、5段目は空にして年神様から授かった福を詰めるといった風習もあるようです。

一番上の「一の重」には黒豆、数の子、田作り、紅白蒲鉾など正月に欠かせない祝い肴と呼ばれる料理を、「二の重」には昆布巻き、きんとん、伊達巻、紅白なますなど口取りや酢の物を、「三の重」にはブリやタイ、エビなどの焼き物、「与の重(※)」には筑前煮など山の幸の煮物を中心に詰めていきます。詰める料理の品数は、吉とされる奇数にすると縁起がいいとされています。
※死を連想させる四は使わず、与の字を使います。

ただし最近は、簡略化した3段重やワンプレートに盛り合わせるお重なしのおせちも登場しています。

お正月やお正月準備について、昔ながらの光景を目にすることも少なくなってきています。各地において古くから受け継がれてきたお正月やお正月準備について、本来の意味、風習、しきたりを知った上で、現代の生活スタイルに合わせてアレンジすることはできますので、今年のお正月準備はお子さまと一緒に、楽しく工夫を凝らし、取り組んでみてはいかがでしょうか。

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