心づけ

心づけって何?チップとは違うの?

日本の冠婚葬祭で耳にする「心づけ」ですが、普段の日常生活を送る上では殆ど意識することはありません。心づけをご存じない方に説明しますと、心づけとは簡単にいえば欧米で言うチップのようなものだと理解しても、それほどの相違はないでしょう。ただし日本の心づけは、サービスが行われる前に渡すこともあり、「お世話になることに対して、良きに取り計らいくださいますように」という意味が込められています。
喪主として葬儀を執り行う際、心づけはそもそも必要なのでしょうか。必要な場合、どのようなケースでしょうか。相場や対象となる方々も含めて紹介します。

CONTENTS
1. 心づけとは
2. 心づけは必要か?
3. 心づけの対象となる方々と相場

1. 心づけとは

心づけとは、欧米でいうところのチップと似ている文化で、日本では寸志などと表現することもあります。
心づけは、主に葬儀をお世話して下さる方々(葬儀スタッフさんや運転手さん、火葬場スタッフさん)などにお礼の気持ちとしてお渡しします。
ちなみに心づけの相場はお渡しする相手や地域、葬儀の規模によっても異なりますが、基本的に心づけは葬儀費用に含まれません。そのため、葬儀社からの見積書や請求書にも明記されません。
心づけは、以前よりも少しずつ廃れてきている風習かもしれませんが、それでも地域によってはまだまだ根強く残っています。また、心付けをお渡しすることが当然だった世代の方々に対しても配慮する必要があるため、まだまだないがしろにはできません。
心づけは、白封筒に「御礼」または「寸志」、「志」と表書きして渡します。

 歴史 

心づけの歴史とチップの浸透

心づけの発祥は諸説あり、明らかになっていませんが、その中の一つとして、身分の低い方々が行う傾向のあった遺体処理に対する慰めの気持ちで、遺族が金銭を施していたという説があります。
現在の心づけに対して、そのような意味合いはなくなりましたが、一方で心づけは欧米のチップと比較されがちです。欧米のチップは、サービス業の最低賃金が低めに設定されている中、サービスを提供してくれたその人自身への報酬として捉える傾向があります。。日本ではそのようなチップの認識が広がってはいませんが、Uberを代表に、欧米の個人間サービスが日本でも流行しつつある中、配達者さんや運転手さんにチップを渡す機会が徐々に増えてきています。
現在、心づけは少しずつ廃れつつありますが、心付けがチップという形に名前を変えて、将来日本でもチップが定着するかもしれませんね。

2. 心づけは必要か?

心づけとは、本来感謝の気持ちを表現する際に用います。お世話になったことに対するお礼、これからお世話になることへのお礼で心づけをお送りします。
つまりこれらの基準に照らし合わせて、必要あればお送りし、必要でなければ送らないという判断でも大きな問題ではないでしょう。
しかし一点注意が必要です。なぜなら心づけは古くから存在していた慣習だからです。そのため、受け取る側にとって、それまで当たり前のように頂いていた心づけがなくなれば、少々複雑な気持ちになってしまうのも想像に難くありません。
ということで、お礼の気持ちを表現したいかどうかだけで心づけを判断するのはおすすめしません。なぜなら地域や斎場、会社によって「誰にお渡しするべきか」や「どのくらいお渡しするか」はおおよその習わしが残っているからです。
地域や斎場、葬儀社、業者によって心づけの取り決めは大きく異なります。中には現代の風潮に合わせて、心づけを受け取ることを禁止にしている会社や斎場も増えてきました。心づけをお渡しするべきかどうか不安な方は、まずは一度葬儀社に相談すると良いでしょう
その地域で心付けがどのように取り扱われているのか、古くからの習わしだけでなく最新事情も考慮した上で、あなたの助けになってくれるはずです。

心づけを断られたとき

お伝えした通り、心づけは本来感謝を表現するときに送ります。ところが断られることもあります。なぜなら「心づけを禁止とする」という風潮が高まって来ているからです。もしも心づけを断られたときは、素直な気持ちとして「感謝の気持ち」を言葉で表現しましょう。
「受け取って頂きたいけれども、そういう取り決めなら仕方ありません。ただ私達はあなたに心の底から感謝しています。ありがとうございます」などと伝えると、きっとあなたの気持ちは伝わるはずです。

3. 心づけの対象となる方々と相場

心づけを送る対象となる方々とその相場を紹介していきます。

寝台車の運転手さん

逝去場所が病院や施設だった場合、そこから安置場所まで故人を搬送しなければなりません。また安置場所から斎場まで搬送して頂く際も同様で、寝台車の運転手さんには搬送でお世話になります。心づけの相場は3000円です。

マイクロバスの運転手さん

安置場所から斎場まで、参列者が一定数以上いる場合に、マイクロバスを手配することがあります。その際にマイクロバスの運転手さんに心づけを渡すことがあります。心づけの相場は2000円です。

霊柩車の運転手さん

斎場から火葬場まで故人をお連れする際に、寝台車ではなく、霊柩車を手配することも可能です。その場合は霊柩車の運転手さんに心づけを渡します。相場は5000円です。

受付のスタッフさん

お通夜や告別式で受付をしてくれるスタッフさんに心づけを渡すことがあります。親戚であれば3000円、友人であれば5000円が相場となります。

配膳のスタッフさん

お通夜や告別式での食事や飲み物を配膳してくれるスタッフさんにも心づけを渡します。相場は2000円〜3000円です。

世話役

喪主は葬儀当日はもちろんのこと、その前後も大変忙しいため、喪主の世話役をしていただく方にも心づけを渡すことがあります。相場は内容や量に応じて3000〜10000円です。

火葬場スタッフさん

火葬場で故人を荼毘に付すまで、付した後まで対応してくれる火葬場のスタッフさんにも心づけを渡すことがあります。相場は5000円です。

休憩室のスタッフさん

火葬場で遺体の火葬を終えるまでに待機する休憩室でお世話してくれる休憩室のスタッフさんにも心づけを渡すことがあります。相場は2000円です。

僧侶

僧侶には御車代(交通費)、御膳料(お食事代)を渡しますが、この御車代とお食事代が心づけに該当します。お車代と御膳料はそれぞれ10000円です。

お布施と心づけの違い

僧侶にはお布施と御車代、御膳料を渡します。それぞれ封筒を分けることもありますが、寺院手配サービスなどを利用する場合は、予め総額が決められているため、合計して一つの封筒に封入することもあります。
ちなみにお布施は心づけとは異なります。お布施は読経や戒名授与に対する費用です。そしてお布施は葬儀費用ではないため、これも心づけ同様に葬儀費用に含まれません。

葬儀のマナーが複雑である理由に「心づけを送るべきどうか悩ましい」というのも含まれていると言っていいほど、心づけは地域や斎場、会社によって取り決めがバラバラです。
そんなときは、依頼する葬儀社に遠慮なく聞くと良いでしょう。なぜなら葬儀社は地域に根ざして、近隣の方々の葬儀を執り行ってきているからです。
葬儀社を探す際、最寄りの葬儀社をまずは思い浮かべるように、葬儀社も地域の方々の葬儀に尽力してきたはずです。
その中には心づけをどうするべきかということだけでなく、葬儀全般についてきっと力になってくれるはずです。心づけだけに限らず、わからないことがあったときは葬儀社に相談すると良いでしょう。