葬儀直後の儀礼

葬儀を終えた葬儀直後に行う儀礼について説明します。仏式を中心に代表例としては後飾り祭壇の設置とそれに伴う還骨法要(かんこつほうよう)や初七日法要(しょなのかほうよう・しょなぬかほうよう)紹介します。宗旨宗派によって多少違いはありますが、仏教の世界では、亡くなってから49日間は7日ごとに浄土へいけるかどうかの審判があるとされており、初七日法要は、その最初の審判となります。また、神式の帰家祭(きかさい)やその後の儀式、キリスト教式の追悼ミサ等も少しご説明します。

CONTENTS
1. 葬儀直後の儀礼とは
2. 還骨法要・帰家際と後飾り祭壇
3. 初七日法要
4. その他の葬儀直後の儀礼
5. 精進落とし・直会

1. 葬儀直後の儀礼とは

人が亡くなると、葬儀の手配からはじまり、寺院への連絡や家族親戚を含めた関係各所への案内や通知など、遺族に休まる時がありません。
しかし実は葬儀を終えた後も、やるべきことが幾つかあります。もちろん亡くなったばかりのときと比べて、その量は圧倒的に少なくなりますが、それでも直後の儀礼と呼ばれる法要があります。
仏式では、後飾り祭壇を設置して行う「還骨法要」(還骨回向:かんこつえこう)と「初七日法要」などがあります。
現代は少なくなりましたが、初七日法要以後も二七日(ふたなのか)、三七日(みなのか)、四七日(よなのか)、 五七日(いつなのか)、六七日(むなのか)、七七日(しちなのか/なななのか)=四十九日法要などが行われます。
神式では帰家祭が行われ、翌日に翌日祭、10日ごとに霊祭が行われます。キリスト教の追悼儀礼には決まったルールはありません。また、カトリックとプロテスタントでも異なります。カトリックの場合は、死後3日目、7日目、30日目に追悼ミサを行います。
プロテスタントの場合は、死後1カ月後の昇天記念日や1年後の命日に記念式を行うのが一般的です。

 歴史 

法要の歴史

日本で行われている法要はインド仏教に影響を受けています。日本で行われている四十九日法要は、インドで説かれていた中陰説(死後49日までに転生すると信じられていたもの)が由来となっています。

また初七日から四十九日までの間に行われる7日ごとの法要は、インドで7日という数字を重視していたからだと言われています。
中国では、インドの輪廻転生の思想と中国の道教による十王信仰が融合し、閻魔王(えんまおう)や泰山王(たいざんおう)などの裁きにより来世の行き先が決まると言われるようになりました。七七日(四十九日)は行先が決まる重要な審判の日とされ、それ以降は地獄や餓鬼道などに落ちた際の追加審判で、供養により罪が軽くなると言われています。
日本には中国の十王信仰による供養文化が伝わり、さらに3つの忌日が加えられ十三仏信仰が産まれました。

2. 還骨法要・帰家際と後飾り祭壇

仏式の場合

(還骨回向)還骨法要とは、葬儀を終えた遺骨が自宅に戻ってきたことを供養する法要です。
玄関口で手を洗い、塩を軽く胴や背中、足元にふりかけてもらってから、遺骨と位牌を後飾り祭壇と呼ばれる祭壇に安置します。遺骨を祀った後飾り祭壇に、弔問客が故人とその遺族にお悔やみを伝え、あらためてお参りし焼香します。
還骨法要は、文字通りお骨が還ってきたことに対する儀礼です。葬儀後に後飾り祭壇に遺骨を祀り、葬儀を無事終えられたこと、また遺骨が無事に安置できたことについてあらためて供養するものです。
還骨法要の後に「精進落とし」と呼ばれる会食を行います。

神式の場合

神式では「帰家祭」を行います。自宅に戻ったら、玄関口に用意した手水で身を清め、神職にお祓いを受けてから家に入ります。遺骨と霊璽(れいじ)を仮御霊舎(かりみたまや)に安置し、斎主による祭詞奏上(のりとそうじょう)、拝礼、玉串奉奠(たまぐしほうてん)が行われます。帰家祭を済ませたら直会を行います。

キリスト教式の場合

キリスト教の場合は本来土葬ですが、日本では納骨まで遺骨を安置するのが一般的です。祭壇に決まりはなく、遺影に十字架と生花を飾るのが一般的です。

後飾り祭壇は宗教によって少々違いがありますので紹介します。

〈仏式の場合〉
四十九日の忌明けまで設けておく祭壇です。
祭壇:白木の二段または三段(ただし白木以外を使用する場合は白い布を掛けましょう)
上段:遺骨、遺影写真、白木位牌
中段:香炉、燭台、線香入れ、りん
下段・床:供物、花
供物:仏飯、お水、お茶、お菓子、果物、生前故人様が好きだったもの

〈神式の場合〉
神式の後飾り祭壇は、仮霊舎(かりみたまや)と呼ばれています。
祭壇:白木でできた八足の祭壇
上段:遺骨、遺影写真
中段:霊璽(れいじ)と榊(さかき)
下段:三方(さんぼう)に入れた徳利、水玉、皿と玉串と火立
供物:洗米・水・酒・塩・榊・灯明など

〈キリスト教式の場合〉
キリスト教式の後飾り祭壇に特別な決まりはありませんが以下に一般的な例を紹介します。
祭壇:テーブルや机に白い布を掛けましょう
上段:十字架
中段:遺骨、遺影写真
下段:生花、聖書
供物:お好きなものを供えてください

後飾り祭壇は葬儀社が用意してくれることが多い

葬儀社は葬儀そのものだけでなく、葬儀後についても色々とフォローしてくれますが、その中に後飾り祭壇の設置も含まれていることが多いです。
最初の打ち合わせで信仰している宗教について確認をしますが、その宗教に合わせた後飾り祭壇を設置してくれますので、これらについて特別な心配は必要ないでしょう。
ただし葬儀社が後飾り祭壇を設置してくれるかどうかは、事前に確認しておくとよいでしょう。

3. 初七日法要

仏式の初七日法要とは、亡くなったその日も含めて7日目に行うものでした。ただし、現代では葬儀を終えて、また家族親戚が再び集まるのは色々と大変であるという理由で、七日法要を還骨法要と同時に行ったり、あるいは葬儀と同時に行うことが増えてきています。
仏教の世界では、逝去後49日間は、7日ごとに極楽浄土へ旅立てるかどうかの審判がその都度行われると言われています。そのため49日間は魂が彷徨っているため、初七日法要を行って、故人を弔い、極楽浄土にいけるように遺族が願います。
神式では、仏式の初七日にあたる祭儀が十日祭となります。親族や友人を招き、神官による祭儀が行われます。
キリスト教の追悼儀礼は、決まったルールがありません。
カトリックの場合は死後3日目、7日目、30日目に追悼ミサを教会で行います。
プロテスタントでは、死後1カ月後の昇天記念日や1年後の命日に記念式などの礼拝が行われます。自宅や教会に親族や友人が集まり、牧師による祈り、聖書朗読、参列者一同の祈り、賛美歌斉唱が行われ、その後に茶話会が開かれます。

初七日法要だけでなく
四十九日法要も繰り上げ行うことがある

ご紹介した通り、初七日法要は、本来逝去後7日目に行われますが、再度集まる負担を考えて、葬儀後や葬儀中に繰り上げて行ってしまうケースが増えてきています。
ところが最近は四十九日法要も同様に、繰り上げて行うケースが徐々に浸透しつつあります。繰り上げて行うかどうかは、遺族や家族親戚と話し合って決めると良いでしょう。

4. その他の葬儀後の儀礼

仏式

初七日法要から四十九日法要までの葬儀後の儀礼を紹介します。
 
二七日(ふたなのか)法要
初七日で山を越えると三途の川に到着します。三途の川を渡りきるために六文かかるので、棺の中に六文銭を入れて極楽浄土までの無事を願います。
 
三七日(みなのか)法要
三七日では不貞行為の罪が問われます。遺族は「三人寄れば文殊の知恵」で知られる文殊菩薩に祈りを捧げ、故人を助けて下さるようにお願いします。
 
四七日(よなのか)法要
四七日では、生前の悪行をはかる秤があり、故人はそこに乗せられます。慈悲深い普賢菩薩に祈りを捧げ、故人を助けて下さるようにお願いします。
 
五七日(いつなのか)法要
五七日は、嘘つきかどうかを判断する有名な閻魔王が審判を下します。遺族は地蔵菩薩に祈りを捧げて、地獄の苦しみから救ってくださるようにお願いします。
 
六七日(むなのか)法要
六七日では、四七日と五七日でのそれぞれの審判をもとに、生まれ変わるための条件や場所が決められます。お釈迦様の後継者として知られている弥勒菩薩に祈りを捧げると、他人を手助ける術を授けてくれると言われています。
 
七七日(しちなのか/なななのか)法要(=四十九日法要)
七七日は、亡くなってから四十九日にあたります。これまでの審判の結果をもとに最終決定がくだされます。遺族はより良い決定がくだるように薬師如来に祈りを捧げます。

神式

神式の法要は、霊祭(みたままつり)と呼ばれ、10日ごとに行われます。霊祭は神社ではなく、自宅、墓前、斉場などで行われます。神官に祝詞奏上をしてもらい玉串奉奠などの神事を行います。
 
五十日祭
仏式の四十九日にあたり、忌明けとされる霊祭です。「清祓い(きよはらい)の儀」の後に霊璽を御霊舎に移してまつる合祀祭(ごうしさい)も併せて行うことが多いようです。
 
百日祭
死後100日目に行われ墓前祭と呼ばれます。
 
式年際
仏式の年忌法要にあたる祭祀です。

キリスト教

カトリックとプロテスタントで追悼儀礼は異なります。

カトリックのミサ

死後3・7・30日目の追悼ミサ
教会の聖堂に親族や友人、知人が集まり神父によるミサが行われます。

命日祭
年の命日と月の命日に追悼会が行われます。

万霊祭(ばんれいさい:11月2日)
11月2日の万霊節(ばんれいせつ)に教会で死者の霊に祈る特別なミサが行われます。

プロテスタント

昇天記念日
死後1カ月後に牧師による祈祷や説教、賛美歌斉唱などが行われます。
 
記念式
死後1年目、2年目、7年目に、牧師による祈祷や説教、賛美歌斉唱などが行われます。
 
永眠者記念礼拝
毎年11月第1日曜日に教会に遺族や信者が集まり、賛美歌斉唱や聖書の朗読、祈祷、説教などが行われます。

5. 精進落とし・直会(なおらい)

仏式では、葬儀が全て終了し、火葬場から自宅や葬儀式場に戻ってから、僧侶や世話になった方々をねぎらうために「精進落とし」という会食を設けます。「お斎(おとぎ)」「精進明け」と呼ばれることもあります。本来は四十九日の忌明けを迎えたとき、精進料理から通常の食事に戻す意味がこめられていました。
僧侶が参加を辞退される場合は「御膳料」をお渡しします。精進落としでは、上席から僧侶、世話役、知人、友人が座り、喪主や遺族は末席に座ります。
全員が席に着いたら喪主か遺族代表が開会の挨拶をし、最後に改めて閉会の挨拶を行います。
神式では、帰家祭の終了後に、神職や世話役、手伝いをしてくれた方々への感謝の気持ちとして、「直会」という宴席を設けます。もともとは神様に供えたお神酒や神饌を祭壇から下げて全員でいただき身を清めるという意味がありました。喪家で火を使うことはタブーなので、仕出し料理や寿司を頼むのが一般的です。

葬儀の翌日にあいさつまわりを

葬儀でお世話になった方々へのお礼は、葬儀の翌日あるいは翌々日に喪主が直接伺うのがしきたりです。服装は準喪服または男性ならダークスーツ、女性なら地味目なワンピースにしましょう。あいさつに行くのは、寺院や神社、教会、世話役、お手伝いをしてくれた方、町内会などです。2千円から1万円程度を「御礼」の表書きをした無地の封筒に入れて渡します。とくに世話になった方には、お礼のお金とともに菓子折りを持っていくとよいでしょう。

葬儀を終えた後に行う葬儀直後の儀礼として、後飾り祭壇を設置した還骨法要と初七日法要などを紹介してきましたが、残念なことにこれらの法要は徐々に簡略化されてきており、馴染みも少しずつなくなりつつあります。
しかし、還骨法要や初七日法要は、故人を今一度偲ぶ上でも、また遺族が気持ちを整理する意味においても、非常に重要な意味を持つ法要となっています。
「現代では簡略化されてきているから私達も簡略して構わない」と安易に考えるのではなく、これらの法要の意味を改めて理解したうえで、行うべきかどうかを皆さんで話し合うと良いでしょう。