納骨・忌明け

納骨・忌明けとは?

人が亡くなると遺族は喪に服します。忌明けとは喪があけることを意味します。
忌明けによって遺族は通常の生活に戻ります。忌明けは、亡くなられてから35日とする場合もありますが、一般的には49日とされています。ちなみに仏教では49日までを忌中、一周忌までを喪中とします。神道の場合は50日が忌明けになります。そして忌明けのあとに四十九日法要を行いますが、その中に納骨も含まれます。納骨は遺骨をお墓などに収めることを意味します。法要として行う場合は、納骨法要という形で僧侶をお呼びし、読経等を行っていただきます。 忌明けや納骨がどのような意味をもち、それぞれ何をするべきかなどをまとめてみました。

CONTENTS
1. 忌明けとは
2. 納骨とは
3. 分骨について
4. 忌明けに行うこと
5. 香典返し
6. 納骨の流れや注意点

1. 忌明けとは

忌明けは、一般的には「きあけ」と読みますが、「いみあけ」と読むこともあります。忌明けは、故人の冥福(仏式の場合)を祈る期間(忌中)を終えることを意味し、その期間は一般的には49日とされています。ちなみに忌中の間は、結婚式やお祭りなどに参加せず、神社の鳥居もくぐってはいけないとされています。神式で忌明けとされるのは五十日祭で、翌日に清祓(きよはらい・せいばつ)の儀という霊祭を行うことで忌明けとなります。キリスト教は死をタブー視しています。すべてのものは永遠の神がつくったもので、永遠こそが自然であるという考え方から、死は非自然的で「生死」という言葉は存在しません。ですから、喪中や忌中という概念が存在しません。

49日が忌明けと呼ばれる理由

仏教では49日に忌明けを迎えると、法要や会食、納骨を行います。神道の場合、五十日祭の翌日に清祓(きよはらい・せいばつ)の儀を行うことで忌明けとなります。ちなみに、キリスト教には忌明けという概念はありません。仏教では、人が亡くなった日から忌明けとなる49日間を「中陰(ちゅういん)」と呼びます。死者の魂が向かう冥土という世界に存在する十王(じゅうおう)が、7日ごとに裁きを行い、丁度49日目に泰山王(たいざんおう)の裁きを受け、故人の霊が極楽浄土にいけると信じられており、それ故に49日が忌明けとされています。

 歴史 

法要の歴史

仏教はインドで生まれました。そこから仏教(北伝仏教)が中国に伝わり、中国に元々あった儒教の「孝」という考え方と結びついたことで徐々に変化し始めます。具体的には、5〜6世紀にインドで説かれていた死後49日までに転生するという考え方・中陰説が取り入れられて、追善供養を行うための経典が作られるとともに、亡くなってから7日目の初七日から二七日(ふたなのか)という具合に四十九日までの各7日の法要と百ヶ日、一周忌、三回忌まで誕生します。そして仏教が日本に伝来し、回忌法要も同時に伝わります。ただ鎌倉時代は三回忌まででしたが、12〜13世紀頃から七回忌、十三回忌、三十三回忌が追加されます。さらに16世紀頃には十七回忌、二十五回忌が加わり十五仏事となります。そして、江戸時代には二十三回忌、二十七回忌、五十回忌が新たに加わり、現在では三十七回忌、四十三回忌、四十七回忌と増え、百回忌、百五十回忌、二百回忌など、50年・100年単位でも行われるようになりました。ただ、一般的には三十三回忌、五十回忌で弔い上げとなります。

2. 忌明けに行うこと

忌明けは喪があけることで通常の生活に戻りますが、それとともにやるべきことも幾つかありますので、それらを紹介します。

四十九日法要

亡くなられてから七日ごとに死者への審判が行われると言われています。それが七回目となる四十九日に最後を迎え、閻魔様の判決を受けることになります。つまり四十九日は故人だけでなく、遺族や親族親戚、知人友人にとっても非常に重要な意味を持ちます。忌明けとなる四十九日に法要を行います。これを「四十九日の法要」といい、故人と生前に縁があった方々が集まってお祈りをします。

開眼法要

仏壇やお墓を購入したときは、仏壇やお墓に魂を入れる「開眼法要」を行います。仏壇やお墓を購入する、あるいは買い換えるという機会は逝去後が多いため、開眼法要も忌明けに行うことが多いです。既に仏壇やお墓をお持ちの場合は不要です。ちなみに仏壇を買い換える、墓の改葬の際は、開眼法要とは逆に、古い仏壇やお墓の魂を抜く閉眼法要が必要です。

納骨法要

「納骨法要」とは文字通り、お墓に遺骨を納めるときに行う法要です。忌明けに行う四十九日の法要と同時に行うことが一般的です。

お斎

四十九日の法要や納骨法要の後に行われるのが「お斎(おとき)」と呼ばれる会食です。故人を供養するだけでなく、僧侶や参列者に感謝の気持ちを伝えるおもてなしの場でもあります。四十九日を境に肉・魚料理を食べても良いとされていますが、宗派によっては精進料理となります。寺院や僧侶に事前に確認しましょう。

香典返し

香典返しは、三十五日か四十九日の忌明けに挨拶を兼ねて行うものでしたが、現在では当日返しと呼ばれる葬儀当日に会葬返礼品と共に渡す風習が根付きつつあります。当日返しで香典に頂いた額に対して半返しとならなかった場合は、不足分を追加で対応するということも忌明けに行います。香典返しの際には、挨拶状を添えることを忘れずに。神式やキリスト教式では、香典は本来ありませんが、香典にあたる御玉串料や御花料などを贈る習慣が一般的になりました。神式やキリスト教式でも「偲び草」や「偲草」を表書きにした熨斗を用います。

※香典返しをしない場合
公的機関等で香典返しを禁止されている場合などは、不祝儀袋に「香典返しは不要です」と書かれていることがあります。その場合は香典返しは不要です。また、職場から連名で香典をいただき一人当たりの額が少額の場合は、職場宛てに菓子折りをお贈りすることもあります。生計を担っていた一家の働き手の世帯主が亡くなった場合、「遺族の生活に役立ててほしい」という気持ちが込められているので、香典返しをしなくても失礼にあたりません。その際は挨拶状を送るのが礼儀です。

位牌

納骨が終わるとそれまでの白木の位牌は寺院に返し、漆塗りの本位牌にかわります。仏壇に本位牌を安置します。

神棚封じを解く ※神式の場合

神式では、忌明けに神棚封じの扉を解くという儀式が行われます。これは神道が死を穢れとして捉えているが所以の儀礼で、死と神様を近づけないことを目的としています。五十日祭の翌日に清祓(きよはらい・せいばつ)の儀という神棚や御霊舎(みたまや)に貼っていた神棚封じの白紙(半紙)をはがす霊祭を行うことで忌明けとなります。清祓の儀と百日祭までに行う合祀祭という霊璽を祖先の霊を祀る御霊舎に移す霊祭を五十日祭と同時に行うこともあります。

五十日祭 ※神式の場合

仏式の四十九日にあたり、忌明けとされる霊祭です。「清祓い(きよはらい)の儀」の後に霊璽を御霊舎に移してまつる合祀祭(ごうしさい)も併せて行うことが多いようです。

3. 納骨とは

火葬した遺骨は一度自宅に持ち帰って保管し、忌明けの後にお墓に遺骨を納めるのですが、これを納骨と言います。霊園または寺院に「納骨」し、お墓へ「埋葬」する流れが一般的です。仏式では納骨は忌明けとなる49日か、もしくはそれよりも後に行うのが一般的で、納骨を行うことを納骨式と言い、僧侶を呼んで四十九日の法要などと同時に行うことが多いです。神式やキリスト教式では特別な決まりはありませんが、神式では五十日祭、キリスト教式では月の命日あるいは1年後の命日に行われる追悼ミサに納骨することが多いようです。納骨を行う際は、火葬後に火葬場から受け取る埋葬許可証とお墓の使用許可証が必要です。その他に生花や線香等などもあると良いでしょう。最近は、葬儀当日の火葬の後に墓地に向かい、納骨を行うことも増えています。

納骨堂と永代供養

お墓を継ぐ人がいない、お墓を持ちたくないなどの理由で「永代供養墓」や「納骨堂」を選ぶ方も増えています。永代供養とは、遺族の代わりに寺院や施設がお墓の管理や供養を代行する埋葬方法です。永代供養墓には個別型や合葬型、納骨堂型のものがあり、納骨堂はロッカー式や室内墓所と呼ばれる建物の中に納骨されるものです。永代供養と言っても期限を設けている場合が多く、契約期限後は合祀されます。

4. 納骨の流れや注意点

納骨の流れと注意点を紹介します。お花を含めたお供え物は納骨の前にしておくと良いでしょう。

仏式

①喪主の挨拶
まずは喪主の挨拶ですが、既に四十九日の法要で挨拶を済ませている場合は省略しても問題ないでしょう。

②納骨
墓石の下にあるカロートと呼ばれる納骨棺がありますので、そこに遺骨を納め安置します。

③卒塔婆
卒塔婆(そとば)を墓石の後方に立てる(浄土真宗を除く)卒塔婆は、先祖の追善供養に用いられる細長い板で、古代インドの仏塔が起源と言われています。お釈迦様の遺骨を納めた塔をサンスクリット語でストゥーパと言い、それを漢字で表現したものが卒塔婆となったようです。

④線香・供花
墓前に線香や生花を供える

⑤読経・焼香
僧侶による読経と参列者による焼香が行われます。

⑥散会
最後は喪主による感謝の意を込めた簡単な挨拶をして散会となります。僧侶にお布施を渡します。

⑦お斎(会食)
参列者で会食します。場所は自宅や葬儀式場、寺院、料理屋などです。

神式

①墓石の前に遺骨を安置する

②墓所の左右の対象の位置に榊、銘旗、花を飾り、神饌を備える

③神職がお祓いをする

④祭詞奏上

⑤玉串奉奠

⑥参列者が礼拝し、玉串を捧げる

キリスト教

①神父(牧師)が立ち会い賛美歌(聖歌)を歌う

②神父(牧師)による聖書朗読

③祈りを捧げる

5. 分骨について

遺骨は一つの骨壷に入れなければならないという決まりはありません。納骨以外に、自宅などの身近な場所に置いておきたいというニーズは確かにあり、そのような場合におすすめなのが分骨です。分骨とは、故人の遺骨を2つ以上の骨壺などに納めて、別々の場所で供養することで、目的は手元供養です。手元供養とは、自分なりに遺骨を供養する方法です。自宅の仏壇に置く、ペンダントにして肌身離さず身に付けるなどの方法があります。

分骨の手続き

●葬儀に分骨を希望する場合
葬祭業者に相談し、火葬場で分骨を行います。

●自宅安置後に分骨を希望する場合
菩提寺や霊園に相談し、僧侶が読経する際に分骨します。

●納骨後に分骨を希望する場合
墓地管理者に分骨証明書を発行してもらい、その証明書を持って分骨先に納めます。

お墓を改葬するには

お墓が遠方でお参りに行けない、一人っ子同士での結婚、お墓を引き継ぐ人がいないなどの理由でお墓を移転することを「改葬」と言います。改葬には墓地埋葬法で定められた手続きが必要で、菩提寺に事前に相談することが大切です。改葬には、寺院への離檀料やお墓を処分する費用、お墓を移す費用などが掛かります。

改葬の流れ

改葬先の墓地管理者に「受け入れ証明書」の発行を依頼

現在の墓地管理者に「埋葬証明書」の発行を依頼

市区町村役場に改葬許可申請書・受け入れ証明書・埋葬証明書を提出し改葬許可証を取得

現在の墓地管理者に改葬許可証を提示し遺骨を取り出す

墓石の撤去、墓地の原状回復

改葬先の墓地管理者に改葬許可証を提示し遺骨を埋葬

6. 香典返しのマナーとおすすめの品物

香典返しは肉・魚・果物等の生ものを避けるというマナーが存在するとともに、すぐ使ってなくなるものが良いとも言われています。香典返しにおすすめの品物はカタログギフトです。ただし金券やギフト券は避けましょう。よくある香典返しはお茶、珈琲、調味料、海苔、ジュース、タオル、石鹸、洗剤です。香典返しには掛け紙を使います。一般的にのし紙といわれていますが、正式にはのしの無い掛け紙です。水引は結び切りを使います。表書きは「志」が一般的ですが、一部の地域では、仏式の香典返しに「満中陰志」または「満中陰」が使われます。神式やキリスト教式で葬儀を行った場合の表書きは「偲び草」や「偲草」とします。

逝去後に葬儀社を決め、打ち合わせをし、誰をお呼びするか、またお食事や返礼品をどうするかなどを決めるわけですが、それは形容しがたい慌ただしさとなります。それは身体的なものだけではありません。故人を亡くした悲しみに加え、葬儀の準備という慣れないことに対する、精神的な疲労も重なることになります。しかし、それらの心労も忌明けとそれに伴う納骨をもって、一つの区切りを迎えることになります。忌明けを迎え、納骨を終えることで、いよいよ通常の生活に戻るわけですが、これらの意味をよく理解し、対応したいものです。