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ランドセルの最新事情と選び方のポイント

小学校入学を控えたお子さまがいらっしゃるご家庭では、すでにランドセルを購入しましたか?なかには、夏休みの帰省時に祖父母から購入・プレゼントしてもらう予定という方もいらっしゃるでしょう。

「“ラン活”という言葉が誕生した2015年から、ランドセルの検討・購入時期はどんどん早まる傾向」と語るのは、ランドセル工業会・会長の林さん。今回は、林さんに“ランドセルの最新事情”や“ランドセル選びのポイント”についてお聞きしました。これからランドセルを購入する予定の方はぜひ参考に!

お話をお聞きした方

一般社団法人日本鞄協会 ランドセル工業会
会長 林 州代さん

日本文化であるランドセル産業の発展を目的に活動を行う「一般社団法人日本鞄協会 ランドセル工業会」の会長として活躍。1957年に名古屋で創業したランドセルメーカー「村瀬鞄行」の代表取締役でもある。

ランドセル工業会・会長の林さんに、昨今のランドセル事情を直撃!

最近は、ランドセルの購入時期がどんどん早まっているようですが、実際のところはどうでしょうか?

30年ほど前は、ランドセルが売れる時期というのは11月15日の七五三を終えてから動き出し、12~1月あたりがピークでした。ところが徐々に早まり、2018年度入学用ランドセルの調査では1年前の4月から検討を始め、購入のピークは8月で、入学の半年前には大半の人が購入を済ませている状況に。その後も早くなる傾向が続き、2023年度用の調査では4月より前に検討を始める人も増え、購入のピークは5月という結果になっています。

※調査結果は以下参照。調査はランドセル工業会が、各入学年度のランドセルの検討・購入状況について全国の購入者1,500人にアンケート調査を実施したもの。実際の調査業務は、クロス・マーケティングによる。

■2018年度入学用ランドセルの検討時期と購入時期

検討開始時期(全体,n=1,500)
購入時期(全体,n=1,500)

■2023年度入学用ランドセルの検討時期と購入時期

検討開始時期(全体,n=1,500)
検討開始時期(全体,n=1,500)

4月以前に検討を始める人が多いということは、そのタイミングで翌年の新商品の情報が出るということですか?

はい。例えば2024年度入学用のランドセルの場合、2022年の後半には新商品の開発とカタログ製作が始まり、2023年の1・2月にはカタログが完成、3月には販売・予約スタートという流れが一般的です。

ランドセルに個性を求める時代。“ラン活”という言葉も登場

検討・購入時期が早まっている理由はなんでしょうか?

ランドセルは祖父母が入学祝いに贈るケースが多いのですが、少子化に伴ってお孫さんの数も減少。こどもひとりにかけられる予算が増え、選ぶ際のこだわりも強くなっていると思われます。無難な黒や赤だけでなく、お子さまの好みに合わせてカラーバリエーションが豊富になり、ステッチや刺繍などでほかの人と差を付けるといった個性を求める傾向が高まっています。

メーカーサイドでは、“この色をいくつ製造する”などの年間計画を立てていますが、トレンドの色に人気が集中して売り切れになることがありました。それが重なって、“早く購入しないと人気の色が買えない”という口コミが広がり、それが2015年に登場した“ラン活”につながって、購入時期がどんどん前倒しになっているのが現状です。

では、購入のベストタイミングはいつでしょうか?

確かに、ひとつのメーカーに限れば一部のカラーが4~5月には予定数に達して完売ということもあるかもしれません。ですが、違うメーカーを探せば似た色が見つかる確率も高いですし、秋前までは幅広い選択肢から選ぶことができるでしょう。できればカタログやネットで見ただけで購入するのではなく、実際に店へ出かけて手で触れて、背負ってみながら選ぶのがおすすめです。

前述の通り、2023年度のランドセル購入がいちばん多かった時期は5月のゴールデンウィーク、2番目に多かった8月はお盆のタイミングで、祖父母がお孫さんと一緒に店を訪れて購入したケースが多いようです。お店で購入するメリットには、こどもが実際に背負ってみていちばんフィットするものを選べるほか、祖父母と一緒に選ぶという体験によって、買ってもらったランドセルをより大切にしようという気持ちを養うことにもなります。

ランドセルは、モノを大切にする心を養う教育ツールでもある

最近は、リーズナブルな価格のナイロン製かばんも登場していますが……

多くの小学校では、通学かばんは両手があいて、背負えるものであれば何でもよいとしていますので、ナイロン製のものでももちろん構いません。ですが、ランドセルは日本特有の通学かばんとして1887年に誕生し、長い歴史を持ちます。これほど長い間、受け継がれてきた理由には、以下のようなメリットが挙げられます。

  • 6年間、毎日使っても壊れない丈夫な造り。各メーカー6年保証を設けていて、万が一、破損した場合も無償で修理してもらえる。さらに、ランドセル工業会の定める「ランドセル認定証」が付いていれば、万が一そのメーカーが廃業した場合も工業会が修理を引き継ぐダブル保証制度を導入。
  • 肩ベルトを調整することで、体形が変わっても使い続けられる。6年生になり身長が170cmを超えたとしても使用可能。
  • 体の上部で固定して背負うため、体感重量が軽い。
  • 箱型形状なので、中身を保護して傷めない。教科書やノートなど毎日持ち運んでもボロボロにならない。
  • 万が一、背面にひっくり返っても、箱型のランドセルにより頭を打たない。
ランドセル工業会の「ランドセル認定証」。認定証について詳しくはこちら

6年間ランドセルを大切に使い続けることはゴミを削減するSDGsにもつながり、さらに工業会では、使用後のランドセルを海外に贈る活動もしています。

6年間、使い続けることができるランドセルを選ぶためのポイントは?

前述のランドセル工業会調査(2023年)では、ランドセルの購入金額は「6万5,000円以上」がいちばん多く33.3%、次いで「5万5,000円~6万4,999円」が24.4%と続き、平均では5万8,254円でした。これは決して安い金額ではないため、6年間使い続けられるよう、しっかり吟味して選びましょう。以下に選ぶ際のポイントを紹介しますので参考にしてみてください。

 ポイント1  信頼できる店(メーカー)で選ぶ

なかにはランドセルまがいの商品が売られていることもあり、1~2年で壊れてしまったという事例も。そんな失敗を避けるためにも、普段利用しているデパートやショッピングセンターなど、信用のおける店で購入しましょう。ランドセルは丈夫にできていますが、元気いっぱいのこどもさんのことですから、6年間のうち一度や二度の修理が必要になることがほとんどです。そんなとき、お店で修理を受け付けてくれ、修理に時間を要する場合はその間、違うランドセルを貸し出してくれるなど、アフターサービスが充実しているところがおすすめです。

一方、ネットで購入する場合は、ランドセル工業会が定める「ランドセル認定証」付きの商品を選べば、ネットで購入業者が検索できなくなったり、プレゼントしてもらったなどで購入先がわからない場合も工業会にて6年間、修理を受けることができて安心です。

 ポイント2  こどもに背負わせてみる

ランドセルは年々厚くなる教科書の重さをフォローするよう軽量化していますが、それよりも大切なのはフィット感。体型にフィットしたものであれば、体感重量が軽減し、こどもさんへの負担も極力抑えられるからです。各メーカーが独自の工夫でより体にフィットする構造を開発しています。そのため、どのメーカーのどの商品がいちばんお子さまにフィットするかは、実際に背負って比べてみるのがベスト。店舗では、2kg程度の重りを用意しているところも多く、実際に教科書などを入れたランドセルの重さを体験できますので、ぜひお店に足を運んでみましょう。

 ポイント3  素材は3種類のなかから好みでチョイス

ランドセルの素材は主に、人工皮革、牛革、コードバン(馬のお尻の革)の3種類。最近は人工皮革の加工技術も向上し、品質自体に問題があることは滅多にありません。それぞれ以下のような特徴があるので、好みなどに応じて選んでください。

  • 人工皮革…1.2kg前後と最も軽量。加工がしやすくデザインやカラーバリエーションが豊富。水・汚れに強いが、傷や型崩れしやすいといった面もある。
  • 牛革…重量は1.4kg前後。ランドセルの素材として古くから使われ、高級感、耐久性に優れている。水に弱い側面があったが、最近の牛革は水に強いものも登場。
  • コードバン…1.5kg前後と最も重いが、牛革よりも張りがあり、何よりも高級感のある美しい光沢が特徴。

 ポイント4  カラーは、最終的にはこどもが好きなものをセレクト

最近はお子さまの好みも多様化し、カラーバリエーションが豊富に。また、例えばパステルやくすみ系などトレンドカラーを取り入れるケースも多くなりました。そして、性別を問わないジェンダーレスな色の提案も増えています。以下は、前述のアンケート(2023年度)で、購入したランドセルの色を調査した結果ですが、男児はまだ黒が半分以上ではあるものの、年々減少傾向にあり、青や緑が増えています。一方の女児では、定番の赤は4位まで下がり、パステルカラーの紫や桃色が台頭。男女ともに、5位にランクインしている茶系は、ジェンダーレスな色として少しずつ人気が高くなっています。

 ポイント5  さらに個性を求めるならばオーダーメイドを選ぶのもひとつ

形やサイズを選び、メイン・サイド・背あて・ベルトなど各部位の色を選び、ステッチの飾りやイニシャルの刺繍などのオプションやポケットの種類を選び……というように組み合わせていくことで、何百・何千通りものバリエーションが展開されるオーダーメイド。ほかの子とは違うランドセルを希望される方は試してみるとよいでしょう。

そのほか、機能面やサイズのバリエーションといった面でも各メーカー特徴があり、“たくさんありすぎて選べない”というお悩みもよくお聞きしますが、選ぶ過程も楽しいものです。お子さまと祖父母、親御さんも含め、みなさんでご一緒にお店に足を運んでみてはいかがでしょう。

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