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コラム:喪中はがき

小谷みどり シニア生活文化研究所 代表理事

年賀はがきと喪中はがき

 ハロウィンが終わり、11月に入ると、クリスマス、お歳暮、おせちなど、さまざまな商戦が本格化します。
 日本郵便では、今年も年賀はがきの発売がはじまりました。お年玉くじ付きの年賀はがきは1950年から発売されており、年賀状を出し合う習慣は70年以上も続いています。
 11月に入ると「喪中はがき」が届くようになります。「身内が亡くなると、年末に喪中はがきを送って、年賀はがきを自粛する」ということは知っていても、一緒に暮らしていない祖父母が亡くなっても喪中はがきを送るべきなのか、また、仕事関係の人や長年会っていない人にまで、身内が亡くなったことを喪中はがきで知らせるべきなのか、戸惑う人は少なくありません。

喪と忌

 そもそも「喪」と「忌」の違いをご存じでしょうか。喪中はがきとは言いますが、忌中はがきとは言いません。「忌」は「死はけがれ」という観念に基づき、けがれを移す期間であるのに対し、「喪」は、悲しいので公の場やおめでたい席には出たくないという自発的な期間を指します。
 明治7年に制定された太政官布告では、続柄によって忌や喪の日数が細かく決められていました。現在でも、多くの学校や会社では特別休暇として「忌引休暇」がありますが、故人が配偶者なら10日、父母なら7日、兄弟姉妹と祖父母は5日など、故人との関係によって休暇の日数が異なるのは、その名残です。
 「喪」は自発的な自粛期間ですので、喪中はがきを出すかどうかには、そもそも決まりはありません。身内が亡くなったことを知らない人に、喪中はがきでお知らせして気を遣わせたくないと考える人もいます。親族や親友には喪中はがきを出すが、仕事関係の人には、例年通りに年賀はがきを出すという人もいます。

感謝を伝える機会

 昨今、SNSやメールなどのデジタルツールが普及し、年賀はがきを送るのを辞める人たちが少なくありません。一方で、デジタルツールでやりとりするのが当たり前の若い世代では、親友であっても住所を知らないケースも珍しくないことから、日本郵便では、2年前から、スマホのメッセージアプリLINEで年賀状を作成し、送ることができる「スマートねんが」のサービスを発売しています。
 年始のあいさつは儀礼的な習慣だと思う人もいるかもしれませんが、新年は、お世話になっていることへの感謝や、今年もよろしくお願いしますという気持ちを伝える良い機会でもあります。その意味では、喪中はがきを出す場合も受け取った場合も、こうした気持ちを相手に伝える配慮はしたいものです。

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