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コラム:ハロウィン

石井研士 國學院大學 神道文化学部 教授

 

すっかりハロウィンは私たちの生活に溶け込んでいるように見える。10月になるとディズニーランドやUSJでハロウィンのイベントが始まる。月末になるとテレビでは渋谷でのハロウィンの狂乱の様子が伝えられる。   ハロウィンがいつ頃日本に紹介されたかについては諸説がある。ハロウィンの定着には、エンターテイメントの要素が強く働いたように思われる。1970年代にキデイランド原宿店がハロウィン商品を店頭販売し、1983年には原宿表参道ハローハロウィーンパンプキンパレードが始まった。1990年初頭にはセブンイレブンをはじめとしたコンビニエンスストアが「ハロウィン」のかぼちゃをかたどった、キャンディの入った容器を並べた。ビスケット協会は、ビスケットの日として販売の拡大を図った。バレンタインデーの成功にあやかろうとする意図が見え隠れする。

万聖節の前夜、それとも仮装パーティー?

 1990年代半ばになってハロウィンは急速に知名度を上げていく。カワサキ ハロウィンは1997年、ディズニー・ハロウィーンは1997年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィーンイベントは2002年に始まっている。そして2015年前後になって渋谷でハロウィンが爆発するかのような賑わいを見せ始める。どのハロウィンでも中心は「仮装」である。
 古代ケルトのドルイド教の信仰に起源を持つハロウィンであるが、キリスト教の諸聖人の祝日である万聖節の前夜のことで、死者の魂が家に帰ると信じられた。20世紀になってアメリカで広く受容される過程でエンターテイメント性を強くしていった。ジャック・オー・ランタンや、「Trick or Treat」、そして魔女や吸血鬼の仮装はどこか死のイメージと重なっている。

日本で定着するか

 知名度の高いハロウィンであるが、クリスマスやバレンタインデーのように定着したのかはまだ判断できない。メディアで報道される若者や仮装としてのハロウィンは、いっときの憂さ晴らしや乱痴気騒ぎで終わるかもしれない。現在も年齢別に見て実施率が高いのは、30代の女性である。彼女たちには小さな子どものいる場合が多く、子どもを中心とした家庭行事として祝われている。家庭で行われる年中行事として定着していくかどうかが鍵である。

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