葬儀・告別式(会葬側)
葬儀と告別式は何が違うの?何のためにやるの?
葬儀と告別式は似て非なるものです。そこでここでは葬儀と告別式のそれぞれの意味を紹介します。日常会話の中では、葬儀と告別式は同じ意味で用いられることが多いです。※『日本葬送文化大事典』より
通夜は、別に逮夜とも言い、本義は遺体を火葬(土葬)する前夜をいいます。
葬儀とは死者の往生や成仏を願っての儀式をいい、それに続く別れの儀式が告別式です。
そもそも葬儀とは、葬送儀礼が略されたことで誕生した言葉です。そして葬送儀礼、つまり葬儀とは人の死を弔うための儀式そのものを意味しています。つまり告別式も広い意味の「葬儀」の中に含まれることになります。今日では通夜や葬式、火葬などの一連の儀式も葬儀と呼ばれることがあります。
一方で、告別式は文字通り「故人に別れを告げる式」を意味します。葬儀は一般的に二日間にわけて行われます。初日に通夜、二日目に告別式を行います。
葬儀・告別式は、宗教者をお呼びして宗教儀礼を行って故人を弔い、そして参列者が故人と別れを告げ、喪主が参列者に挨拶をする儀式です。
広義の「葬儀(通夜・葬儀・告別式)」と狭義の「葬儀」
総称して、広義の「葬儀」
狭義の「葬儀」
CONTENTS
1. 葬儀・告別式の流れと所要時間
2. 葬儀・告別式の参列のマナー
3. 葬儀・告別式の服装や靴、身だしなみ
4. 葬儀・告別式の持ち物
5. 葬儀・告別式での禁忌マナー
1. 葬儀・告別式の流れと所要時間
葬儀や告別式に会葬者として参列する際、マナー違反をしていないかどうか気になる方は少なくないと思います。これは、無理もない話ではありますが、そもそも葬儀や告別式に参列する機会がそう多くないことが一因でしょう。
まずは葬儀・告別式がどんな流れで行われるのかを説明します。流れを理解することで、落ち着いた気持ちでいられると同時に、故人との最後のお別れに集中することができるでしょう。葬儀・告別式の流れは以下の通りです。
①参列者の受付
会葬者の方々はここで受付を済ませます。記帳し、必要であれば香典を渡します。
②告別式の開式と僧侶入場
告別式の開式は一般的には司会者(葬儀社スタッフのケースが一般的です)が行います。開式を宣言するとともに仏式であれば僧侶をお迎えします。
③僧侶読経
仏式での葬儀・告別式であれば僧侶の読経が行われます。場合によっては繰上げ初七日法要・式中初七日法要も行われます。
④弔辞・弔電の紹介
弔辞・弔電も告別式の開式同様に、司会者が行います。
⑤焼香
仏式での葬儀・告別式では焼香が行われます。焼香は喪主、遺族、親族、会葬者の順番で行います。宗派によって焼香の作法は異なりますので気をつけましょう。
⑥告別式の閉式
最後に告別式の閉式です。閉式とともに僧侶をお見送りします。閉式の案内は開式同様に司会者が行います。
⑦お別れの儀
お別れの儀では別れ花をお棺に入れます。ご遺体全身を拝める最後の機会となります。
⑧喪主挨拶・出棺
喪主の挨拶では故人への思いを述べたり、故人に親しくしてくれた方々や、会葬者へお礼の言葉を述べます。そしていよいよ火葬場へと出棺します。
葬儀・告別式の所要時間はおよそ1時間です。
歴史
葬儀・告別式の歴史
日本の葬儀・告別式が現在の形式に落ち着くまでに、様々な変遷をたどってきました。
平安時代までの律令国家では、僧は現代のような葬儀を行うことはありませんでした。鎌倉時代になり、律令制の終わりや鎌倉仏教の布教が影響し葬儀が行われるようになります。
江戸時代では野辺送りと呼ばれる葬送が行われていました。交通手段がなかったため、遺体を人力で埋葬地まで搬送していました。遺族が葬列と呼ばれる隊列を組んで、遺体を運びます。運んでいる間に、故人の冥福を祈ったのでしょう。ちなみに野辺送りという名前の由来は野辺が「埋葬場」を意味するところから来ています。
明治時代は野辺送り・葬列が豪華になります。桶屋が葬列の際に必要な祭具(棺桶、棺)の制作や輿、旗、車などの貸し出しをしていたそうです。ちなみにこの桶屋が転じて現代の葬儀社になっていきます。江戸時代から桶屋(葬儀社)は存在していたようですが、明治時代で豪華になった葬列で業務範囲を広げました。
その後、豪華な葬列は徐々に役割を終えて、大正時代を過ぎたあたりから告別式が重要視されていきました。ちなみに葬列で使用していた祭具は現在の告別式で使用している祭壇などに組み込まれるかたちで残されています。
現在の葬儀・告別式も徐々に変化を遂げており、昔に比べて所要時間がおよそ1時間と短くなったのは1970年頃からです。葬儀の途中から焼香を始めるようになったことで時間短縮されました。都市部では地域共同体だけではなく会社関係者が手伝いに参加するようになり円滑になったことも時間短縮の要因の一つとなりました。
また、初七日法要を葬儀・告別式当日に繰り上げて行うことも簡略化の一つであり、現在では多く行われるようになりました。
2. 葬儀・告別式の参列のマナー
葬儀や告別式に会葬者として参列する際のマナーをご紹介します。先程紹介した葬儀・告別式の流れに対応した、それぞれのパートでのマナーを紹介します。
参列者の受付
受付は親族や会社関係者、一般など関係者別に分けられていることがありますので、ご自身が該当する受付に並びましょう。代理で参列する方は、本来参列するはずだった方のお名前を記帳し、その下か横に「代理」と書き添えると良いでしょう。
受付の際にお悔やみの言葉を述べます。「この度はご愁傷様でございます」「心からお悔やみ申し上げます」などが相応しいでしょう。
告別式の開式と僧侶入場・僧侶読経・弔辞弔電の紹介・告別式の閉式・お別れの儀
葬儀・告別式全体のマナーですが、式中は基本的に私語やおしゃべりは控えましょう。
小さいお子さんがいらっしゃる方や、体調が優れない方、お年寄り、足腰が悪い方・長時間の着席・正座姿勢に耐えられそうにない方は、式場の出入り口付近の席を選び、何か問題が起こったときにすぐに席を外せる位置にいることが望ましいです。
焼香
葬儀・告別式の規模によって焼香の待ち時間が異なります。家族葬程度であれば、すぐにご自身の順番がやってきますが、一般葬や社葬などの場合は焼香のために並ぶことも考えられます。
ご自身の順番が来たら、ご遺族に一礼、祭壇に一礼した後焼香し、故人のご冥福(仏式の表現)を祈ります。焼香後は、遺族に黙礼しましょう。その際近くに行くことが出来た場合は、端的にお悔やみの言葉を述べても良いでしょう。
出棺
火葬に立ち会わない方はこの出棺が最後のお別れとなります。そのため、故人の冥福を祈る意味でも、出棺まで立ち会うのが、遺族に対する礼儀としても望ましいでしょう。
また葬儀社のスタッフからお棺を霊柩車に運び入れる際に、「手伝ってくださる方はいませんか?」などの声がけも稀にありますので、ご自身で問題ないと思われる方は手伝ってもよいでしょう。故人を運ぶ霊柩車が火葬場に出発する直前に黙礼と合掌をして故人の冥福を祈ります。
なお、火葬まで立ち会うことは、基本的に遺族からのお願いがあった方に限られますので、自ら申し出ることは控えましょう。
告別式の前に火葬する前火葬・骨葬とは
東北、沖縄、離島等の一部の地域では前火葬・骨葬と呼ばれる形式が一般的です。
葬儀・告別式の日の朝に火葬をしたり、前日に火葬をし、遺骨の状態で葬儀・告別式を行います。この風習は青森県弘前市を拠点としていた津軽藩の初代藩主の津軽為信公が、滞在していた京都で亡くなり、遺体を津軽まで運ぶことが難しかったため、先に京都で火葬し、遺骨を持ち帰って津軽で葬儀を行ったことが由来とされています。
3. 葬儀・告別式の服装
次は葬儀・告別式に会葬者として参列する際の服装や靴、身だしなみのマナーを紹介します。
男性の服装
男性は喪服かブラックスーツが好ましいです。ただし光沢感のある生地のブラックスーツは避けましょう。急ぎ駆けつける場合など喪服の用意が出来ない場合、ビジネススーツでも光沢感がなく、暗い色のものであれば代用は可能です。
シャツは白をおすすめします。ネクタイは黒が良いでしょう。ベルトや靴、靴下も黒が良いでしょう。ただしベルトのバックルや靴については派手だったり、装飾が施されているものは控えたほうが良いでしょう。黒い靴でのエナメル素材などの光沢のある靴は避けましょう。
女性の服装
女性も男性同様に喪服か、黒を基本としたワンピース、アンサンブルがおすすめです。華美な装飾やノースリーブ、短いスカート、肌の露出が多い服装は避けましょう。また光沢感のある生地の服も控えましょう。
靴や鞄も黒の落ち着いたデザインをおすすめします。エナメルなどの光沢素材は控えましょう。
小さいお子さんや学生に相応しい服装
大人の方を対象に葬儀や告別式での相応しい服装を紹介してきましたが、小さいお子さんや学生さんはどうなるのでしょうか。
未就学児や小学生であれば、やはり大人と同様に黒をベースにシャツは白、または黒いインナーとするのが良いでしょう。スニーカーでも問題はありませんが、色は黒が望ましいでしょう。中学生や高校生、大学生、専門学校生などは、喪服がない場合は通っている学校の制服でも問題はありません。制服がない場合は、未就学児や小学生と同様に黒をベースにした服装で、シャツは白でも構わないでしょう。
4. 葬儀・告別式の持ち物
次に葬儀・告別式での持ち物を紹介します。
香典
香典は、不祝儀袋に包み、白と黒の水引きの結び方はほどけない結び切りを使いましょう。表書きは仏式は「御香典」や「御霊前」、宗教がわからない場合でも「御霊前」は無難に使うことができます。
数珠
仏式の葬儀であれば、合掌や焼香の際に数珠が必要です。宗派によって色や形が異なりますが、お持ちの数珠でも問題はありません。
その他
ハンカチや、不祝儀袋を包む袱紗なども準備すると良いでしょう。
お供え物を届ける場合
葬儀場所の事情等や地域によって異なりますが、親族や生前故人と親しかった方などの場合には、お供え物を持参する方もいます。お供え物は線香やお花、日持ちのするお菓子などが良いでしょう。
5. 葬儀・告別式での注意事項
葬儀・告別式での注意事項を紹介します。葬儀や告別式という厳粛な場でのマナー違反は、故人だけでなく、遺族にも失礼になることはもちろん、そこにいる関係者全員の気分を害してしまう可能性もあるので気をつけましょう。
服装や身だしなみのマナー違反
先程紹介したとおり、葬儀や告別式での服装については守るべきマナーがあります。これらを守らずに参列することは望ましくありません。突然の訃報や遠方から駆けつけるなどを理由として、身だしなみの準備ができなかったなどの場合は、事前に遺族にその旨を伝えて失礼を詫びましょう。
香典のマナー違反
香典は不祝儀袋に包みます。ご祝儀袋に入れることのないように気をつけましょう。
遺族への言葉
忌み言葉と呼ばれる、葬儀や告別式の会話で相応しくない言葉や単語があります。忌み言葉には縁起の悪い不吉な言葉と、繰り返しを連想させる言葉があります。
死を連想させる忌み言葉:落ちる、衰える、かける、枯れる、冷える、など
不幸が続くことを連想させる忌み言葉:何度も、度々、また、追って、など
葬儀や告別式の進行を妨げる
遺族との長話や私語は葬儀や告別式の進行を妨げることがあるので、気をつけましょう。
また遅刻したり、焼香が長引いたり、式場を何度も出たり入ったりすることも望ましくないので気をつけましょう。
送ることから別れることへ
社会の超高齢化により喪主・施主となる方も高齢化し、また、核家族化や個人化の影響により、葬儀は家族葬を中心とした小規模なものに変わりつつあります。また、喪主が家督を継ぐ長男ではなく妻になることも増えました。そんな中、”送る”儀式という側面より、故人との”別れ”を大切にし、死を受け入れるグリーフケアを意図した儀式へと意識が変わってきています。
弔辞を頼まれたら
弔辞を遺族から依頼されたら、引き受けるのが礼儀です。
弔辞では、故人の経歴や人柄、感謝の気持ち、遺族を励ます言葉などえを述べましょう。
弔辞は3分程度、文字数ですと1200文字程度です。巻紙に薄墨で書くのが正式といわれていますが、白い無地の便箋でもかまいません。無地の封筒に入れ、表書きは「弔辞」と書きます。
【弔辞例】
○○さんのご霊前に、友人を代表いたしまして、謹んでお別れの言葉を捧げさせていただきます。○○さん、突然の訃報に、今でも気持ちの整理がつかずにいます。あんなに元気だったのに信じられない気持ちでいっぱいです。
あなたとは中学校からの付き合いで、高校まで一緒でした。部活も一緒で共に汗を流した思い出がよみがえります。いつも前向きなあなたの姿は、いつまでも心の中に生き続けます。
ご遺族の皆様は、お別れはお辛かったことと存じます。お体を壊すことのないようにご自愛ください。
〇〇さん、どうか安らかにお眠りください。