数珠

数珠って必要なの?

式で行われる葬儀や法要(法事)には、数珠を持参します。
数珠(じゅず)は、念珠(ねんじゅ)とも呼ばれるように、もともとは念仏を唱える際に1玉ずつ繰って、何回唱えたかを数えるために使われる法具(仏具)です。数珠には宗派ごとに正式な本式数珠とほとんどの宗派で使える略式数珠があります。数珠は葬儀の時しか使わないという方も多いですが、数珠を身に着けることで仏様を身近に感じられ、心が丸く素直になり、厄除けや魔よけの効果があると言われています。数珠は持ち主の身を守る分身のようなものとも考えられていて、貸し借りはせずに個人で持つことをおすすめします。

CONTENTS
1. 本式数珠と略式数珠
2. 男性⽤と⼥性⽤の違い
3. 数珠の使い⽅
4. 各部位の名称
5. 数珠の素材
6. 仏教宗派と本式数珠

1. 本式数珠と略式数珠

数珠には宗派ごとに正式な数珠とされる本式数珠とほとんどの宗派で共通して使える略式数珠があります。本式数珠は宗派により形は異なりますが、珠の数は108個が基本で、私たちの心にある煩悩を表す数字です。煩悩とは、心身を悩まし煩わせる心の動きを意味する仏教で使われる言葉です。数珠の珠のひとつひとつが煩悩を祓ってくれると言われています。
略式数珠は本式数珠を簡略化したもので片手数珠とも呼ばれます。珠の数は半分の54個、3分の1の36個、4分の1の27個などもありますが、現代では使いやすさが重視され22・20・18個のものが多く見られます。現代の葬儀では多くは略式数珠が用いられますが、日蓮宗では本式数珠を持つことが多いなど、地域や家系、宗派でしきたりがあることをご留意ください。また、数珠風ブレスレット(腕輪念珠)は、お守りとしての用途が強いので、葬儀や仏事では使わないようにしましょう。

本式数珠
略式数珠

2. 男性用と女性用の違い

略式数珠には男性用と女性用の区別があり、珠のサイズや色が異なります。男女ともに略式数珠の珠の数は22・20・18個が一般的です。男性用の略式数珠は、珠のサイズが比較的大きいものが多く、落ち着いた色の物が主流です。珠のサイズは10~18mm、長さは28~29cmが一般的です。珠の数が少ないほど珠のサイズが大きくなります。女性用は珠が小さく色も明るい女性らしい色の物が主流です。珠のサイズは6~8mm、長さは25~26cmが一般的です。

3. 数珠の使い⽅

宗派により数珠の持ち方は異なりますが、共通する基本的マナーがあります。数珠は座っている時には左手首にかけ、歩く時や数珠を使わない時は房(ふさ)を下にして左手で持ちます。長い数珠の場合は、二重にして持ちます。男性と女性で持ち方は変わりません。左手に持つのは、左手は仏様の世界、右手は現世を指しているからです。
合掌の際には、両手を合わせた親指と人差し指の間に房が下になるようにかけ、親指で軽く押さえます。長い数珠は、両手の中指にかけて掌ですり合わせます。

数珠は左手にかけるか持っておく

合掌する時は短い数珠は両手にかけ親指で押さえる

焼香の際の数珠の使い方

  • 焼香台まで歩く時は房を下にして左手で持ちます。
  • 遺族に一礼し、焼香台に近づき遺影に一礼し、持っていた数珠を左手の親指と人差し指の間にかけます。
  • 焼香中は左手に数珠をかけたまま右手で抹香をつまみ、目の高さまで上げてから香炉にくべます。(焼香の回数は、自分の宗派に合わせてもよいですし、相手の宗派に合わせる心遣いも、相手への敬意を表すのでよいでしょう。僧侶や喪主が先にお焼香を行うので、その方法に倣うのが無難です。)
  • 数珠を両手にかけて合掌します。
  • 合掌後は数珠を左手に持ち、遺族に一礼して席に戻ります。

数珠は肌身離さず持つものとされ、席を離れる際は椅子や畳の上に置くのはマナー違反です。バッグやポケットに入れて持ち歩きましょう。バッグに入れて持ち歩く際は、数珠袋(念珠入れ)に入れることをおすすめします。数珠の房や珠が傷むのを防げます。

数珠のトレンド情報

最近は、パワーストーンを使った数珠風ブレスレットを厄除けや魔よけの効果があるお守りとして、身に付ける人が増えています。ファッションとして日常的に使えるタイプも多く販売されています。これらは葬儀や仏事には使えませんが、身近なものとして気軽に数珠を生活に取り入れられます。

4. 各部位の名称(数珠の形状)

数珠にはパーツごとに名称があります。各部の名称や特徴を知っておくと、数珠を購入する際に便利です。

【親玉(おやだま)】
珠の中で最も大きい珠で、阿弥陀如来や釈迦如来を象徴しています。略式数珠では房(ふさ)の根元に1個、本式数珠では1個または2個あります。

【主玉(おもだま)】
数珠を構成する主な珠で、本式数珠は主玉が108個あります。

【天玉(てんだま)】
主玉の間にある小さな玉で、本式数珠では「四天玉」と呼ばれ4個あります。四天王や四菩薩を象徴しています。略式数珠は2個あります。

【ボサ玉】
略式数珠だけにある親玉と房をつなぐ玉です。

【弟子玉(でしだま)】
本式数珠だけにある釈迦の十大弟子や十菩薩を象徴する10個の玉です。

【露玉(つゆだま)】
本式数珠だけにある弟子玉の下にある露型の玉です。

【浄明玉(じょうみょうだま)】
本式数珠の表房の一番上にある菩薩を象徴する独立した玉です。

【房(ふさ)】
本式数珠は宗派によって房の形状や色が異なります。略式数珠には、切房、頭付き房、梵天(ぼんてん)房、紐房などの種類がありますが、お好みの物をお選びください。素材は正絹がおすすめです。

【紐(ひも)】
数珠の珠は、1本の紐でつながっており、紐は観音菩薩を象徴しています。

数珠が切れると
縁起が悪いの?

長年使っていると数珠の紐が切れることがあります。それは念仏に励んだ証なので、縁起が悪いことはありません。逆に悪縁を切ってもらえたと考えましょう。切れてしまった数珠は、仏具屋さんで修理してもらえます。壊れてしまった数珠や不要になった数珠は、お寺で供養もしてもらえます。

5. 数珠の素材

数珠の素材は、黒檀(こくたん)、白檀(びゃくだん)、紫檀(したん)といった木製のものから、菩提樹の実、瑪瑙(めのう)、水晶、ガラス、真珠、珊瑚などさまざまあります。季節で使い分ける方もいるようです。仏教の経典(観音経)に示された金、銀、瑠璃(ラピスラズリ)、硨磲(シャコ貝の殻を磨いたもの)、瑪瑙(めのう)、珊瑚、琥珀、真珠等の宝を用いるのが良いとも言われています。値段は材質により1,000円程度から数万円以上するものまであります。落ち着いた黒や茶色の縞黒檀や瑪瑙、あるいは淡いピンクの紅水晶、珊瑚、紫色のアメジスト、淡い緑の翡翠などが最近は人気があるようです。透明な水晶と有色の石を組み合わせたり、房の色に決まりは無いので、房と合わせて好みの色を選ぶこともできます。

 歴史 

昔は貴族や僧侶の高級品
数珠の歴史

数珠の歴史は、まだ仏教が生まれる前の古代インドにおけるヒンドゥー教の習慣が起源だと言われています。ヒンドゥー教では、数珠の珠を使ってお祈りの回数を数えていたそうです。その習慣が仏教にも受け継がれ、お釈迦様が疫病の流行した灘陀国(なんだこく)の毘瑠璃王に木槵子(もくげんじ)の木の実を108個つないで身に付け、仏法僧の三宝を唱えるごとに1つを繰るようにと説いたことから、仏教の法具(仏具)としても大切なものとなったと言われています。仏教が日本に伝来した時に数珠も伝わりましたが、当初は貴族や僧侶など一部の人しか持つことのできない高級品でした。密教では数珠は重要な仏具であり、三密加持と呼ばれる修行や護摩祈祷でも数珠が用いられます。
一般の人に普及したのは鎌倉時代以降のようです。江戸時代には数珠を商売にする業者も現れました。

6. 仏教宗派と本式数珠

各宗派により本式数珠の形状や使い方が異なります。

■真言宗
空海が(唐より)伝えた真言宗では、数珠の意味を大切にし、主玉108、親玉2、四天玉4、梵天房が一般的です。主玉を金剛界の百八尊、親玉を大日如来、四天玉を曼陀羅の四方四仏(胎蔵界曼荼羅での四菩薩。南東の普賢、南西の文殊、北西の観音、北東の弥勒)の象徴としています。長い一連の数珠を二重にして用い、その形状から振分数珠とも呼ばれます。使い方は、両手の中指で数珠を掛け、そのまま合掌します。房は自然と垂らします。密教では数珠を擦り鳴らして音を立てる特徴があります。

■天台宗
鑑真がもたらし最澄が広めた天台宗では、扁平な平玉が特徴の数珠が使われます。主玉108、親玉1、四天玉4の構成で、2本の房に平玉20個、丸玉10個が付いています。使い方は、数珠を人差し指と中指の間に掛け合掌します。

■日蓮宗
日蓮が宗祖の日蓮宗では、他の宗派には無い祈祷用の数珠が用いられます。房の組み方と寸法が特徴的です。使い方は、数珠を8の字にねじり中指に掛け、右手に二本房、左手に三本房が来るように持ち合掌します。

■浄土宗
法然が宗祖の浄土宗では、僧侶が儀式の時に使う水晶のみ108玉の荘厳数珠と一般在家信徒が使う数取りのできる日課数珠があり、二連の輪をつないだような形が特徴です。使い方は、2つある輪の親玉を揃えて合掌した手の親指に掛け、房は手前にします。宗派によっては房を外側に下ろす持ち方をします。

■浄土真宗
親鸞が開祖の浄土真宗では、数取りができないよう房が蓮如(れんにょ)結びになっています。門徒数珠と呼ばれ、長い数珠を二重にして使います。主玉108、親玉2、四天玉4の構成で、本願寺派は頭付撚房(かしらつきよりふさ)、大谷派は切房を用います。使い方は、本願寺派では二重にした数珠を合掌した手に掛け房を下ろします。大谷派では二重にした数珠を親指と人差し指の間に挟み房を左手側に下ろします。男性用の一連の数珠に紐房を付けたものは、基本的に略式数珠の持ち方になります。

■曹洞宗・臨済宗(禅宗)
日本に道元が伝えた曹洞宗と栄西が伝えた臨済宗では、主玉が108の一連数珠を二重にして用い、親指が左手の人差し指の上になるように房を垂らして握ります。曹洞宗と臨済宗の違いは、曹洞宗の数珠には金属の輪が付きますが、臨済宗には付きません。禅宗として座禅を重んじているため、数珠の厳しい作法はありません。

どなたでも年に何度かは、通夜や葬儀、法事、お墓参りなどの仏事に参加することがあるかと思います。年齢が上がるとその機会も増えていきます。数珠は(人に借りたりせず)個人のものを持つ方が良いとされていますので、ぜひ数珠を購入して持っていただきたいと思います。また、お子さんにも親御さんが用意してあげると良いでしょう。