焼香

焼香とは

焼香は仏様や故人に向けてお香を焚いて拝むことを意味します。焼香には立って行う焼香と座って行う焼香、そして座った状態で焼香炉を回して行う焼香があります。また宗派によっても焼香の回数が異なります。焼香は葬儀や法事以外で行う機会は多くありません。そのため、初めての方は焼香が近づくにつれてそわそわしがちです。しかし、一度やり方を覚えてしまえばそれ以降は安心です。焼香のやり方や作法を紹介します。

CONTENTS
1. 焼香とは
2. 焼香の基本的な作法・やり方
3. 宗派別の焼香

1. 焼香とは

焼香とは、仏様の功徳を讃えることや、亡くなられた方を弔うために、仏前でお香を焚くことをいいます。
焼香は文字通り、お香を焚いて、匂いを立たせることを目的に行います。お香の匂いには、自らの穢れを落とす効果があると言われており、清らかになった心身で仏様に敬意と感謝の意を表します。そして、お香の匂いはあの世に行くための食べ物であると言われています。お香を焚いて、故人に食べ物をお供えするという意味もあります。 使用するお香は「抹香(まっこう)」です。抹香とは樒(しきみ)の葉っぱや樹皮を粉末にしたものです。

 歴史 

インドから始まった焼香

焼香は仏教発祥の地・インドから始まったと言われ、およそ2500年の歴史があると言われています。ただそれは現代とは異なり、宗教的な儀式で用いられていたわけではなく、インドの気温が高く汗をかく人が多いため、その臭いを消す目的で使用されていたそうです。
ところがこの臭いを消すという効果が葬送儀礼でも利用され始めます。具体的には遺体の臭い消しです。遺体は時間とともに傷みます。傷むことで、遺体から臭いが発せられますので、それを消すことに用いられました。
それ以降、次第にお香が心身を清めるという考え方が広がり、お香と仏教が強く結びつくようになりました。

2. 焼香の基本的な作法・やり方

焼香には立式の焼香と座式の焼香、香炉を回して行う焼香の三種類あります。葬儀を行う会場の都合で、どの焼香を行うか変わります。それぞれの焼香の基本的な作法ややり方を紹介します。

立って行う焼香の場合

①順番になったら祭壇の前まで移動しましょう

②祭壇の手前で遺族と僧侶に一礼しましょう

③焼香台の前で遺影に一礼しましょう

④左手に数珠をかけましょう(事前にかけておくことをおすすめします)

⑤右手の親指・人差し指・中指の3本で軽く抹香を摘まみましょう

⑥香炉に落としましょう

⑦遺影に合掌しましょう

⑧その場から一歩下がり、遺影に一礼し、席に戻りましょう

座って行う焼香の場合:正座の場合

①順番になったら祭壇の前まで移動しましょう
②祭壇の手前で正座し、遺族と僧侶に一礼しましょう
③膝行(膝をついて歩くこと)で焼香台の前に移動し、正座し、遺影に一礼しましょう
④左手に数珠をかけましょう(事前にかけておくことをおすすめします)
⑤右手の親指・人差し指・中指の3本で軽く抹香を摘まみましょう
⑥香炉に落としましょう
⑦遺影に合掌しましょう
⑧その場から膝退で少し下がり、遺影に一礼し、席に戻りましょう

膝行・膝退の作法

座ったままの姿勢で両手の親指を立て、他の指は軽く握ります。両腕を体の前方に置き軽く体を持ち上げ、腰を移動させます。席から焼香台が遠い場合は、中腰で歩くこともあります。

香炉を回して行う焼香(回し焼香)の場合

①香炉がご自身に回ってきたら、会釈して香炉を受け取ります
②香炉を自分の前において祭壇に向かい合掌しましょう※遺族が背中を向けていることが多いため一礼は行わないのが一般的です。
③焼香・合掌・一礼しましょう
④次の人へ香炉を回しましょう(最後の焼香者は香炉を喪主に戻します。)

線香焼香の場合

①線香焼香の場合
②祭壇の手前で遺族と僧侶に一礼しましょう
③焼香台の前で遺影に一礼しましょう
④左手に数珠をかけましょう(事前にかけておくことをおすすめします)
⑤線香は右側のろうそくから火を点け、左手で扇いで線香の火を消しましょう
⑥他の線香より少し離れたところに立てるようにしましょう
⑦遺影に合掌しましょう
⑧その場から一歩下がり、遺影に一礼し、席に戻りましょう
 ※線香の本数、置き方は宗派によって異なります。

神式の場合

①玉串奉奠(たまぐしほうてん)が仏式の焼香にあたります。

②遺族と神官に一礼しましょう

③玉串を受け取り、左の手のひらで葉を下から支え、右手で枝を上から持ちましょう

④玉串を胸の高さまで上げ、玉串台の前に進み、一礼しましょう

⑤右の手のひらを返しながら手前に引き、葉先が向こう側になるよう90度回しましょう

⑥左手を右手側に下げ、右手を葉先に移動させ、根本が玉串台に向くように180度回転させて玉串台に捧げます

⑦三歩下がり、二礼しましょう
⑧音を立てないように(しのび手)二拍手しましょう
⑨もう一度深く一礼し数歩下がりましょう
⑩神官と遺族に一礼して席に戻りましょう
 ※神社により作法が異なる場合があります。

キリスト教式の場合

献花が仏式の焼香にあたります。カトリックとプロテスタントで作法が異なり、カトリック教徒の場合は献花をするとき胸の前で十字を切ります。信者でない場合は一礼するだけでよいでしょう。

①遺族に一礼して両手で花を受け取りましょう

②右の手のひらで花を下から支え、左手で茎を上から持ちましょう

③献花台の前で一礼し、花を時計回りに90度回転させ花を手前に向けましょう

④両手のひらを上に向けて、花を献花台に置きましょう

⑤一歩下がって黙祷または手を合わせ、祭壇に一礼しましょう

⑥数歩下がって遺族と神父(牧師)に一礼して席に戻りましょう

焼香のみをして
途中退出しても構わないか?

立て込んでいる中、突然の訃報で葬儀に駆けつけ、取り急ぎ焼香を行い、早々に退出しても問題ないのでしょうか。
答えは、通夜であればそれでも問題ありません。ただしその旨、遺族に伝えておくべきでしょう。
一方で告別式はできる限り最後まで立ち会いましょう。事前の了解も得ずに、途中で退出するのはマナー違反かもしれません。どうしても最後までの立ち合いが難しい場合は、必ずその旨を遺族に伝え、了解を得たときのみ行うと良いでしょう。

3. 宗派別の焼香

焼香は宗派によって回数が異なります。

仏教

※「押し頂く」とは抹香を指でつまみ、その後に額の高さまで持っていく動作を意味します

宗派別に焼香の回数が異なる理由

焼香の回数は1回から3回行われます。

  • 1回の宗派は「死は一に帰る」という仏教の教えを大事にしています。
  • 2回の宗派は、1回目を主香として故人の成仏を願い2回目を従香として1回目の香を絶やさないために行います。
  • 3回の宗派は、仏教が3(仏・法・僧)という数字を重視していることを理由にしています。

これまで焼香の作法やマナー、回数などを紹介してきました。
焼香は仏様を敬い、故人を供養する目的で行いますが、作法や回数を気にするあまり、これらの気持ちを忘れてしまっては残念ですね。
最も大事にしたいことはあなたの気持ちです。

「心を込めて焼香する」

このことを大切に焼香したいものです。