葬儀とは

葬儀とは?

葬儀とは、葬送儀礼の略語で、故人の冥福を祈り、死者を葬る儀式とそれに伴う儀礼の全てを意味しています。葬儀は通夜、葬式、告別式などを総称して使うことができる言葉です。葬儀には、信仰する宗教などによって、仏教式、神式、キリスト教式、その他の宗教式、無宗教式などがあります。アンケート結果によると、葬儀の形式は、無宗教式を除いた場合、その9割が仏教式を選択しているため、ここでは主に仏教式を掲載します。

CONTENTS
1. 葬儀の意味や役割とは
2. 葬儀の流れ
3. 葬儀に関連する法律
4. 葬儀の形式
5. 葬儀の費用

1. 葬儀の意味や役割とは

葬儀という言葉を構成する葬と儀にはそれぞれ以下の意味が込められています。

葬=「ほうむる。遺体をおさめる。また、その儀式。とむらい。」
儀=「作法。礼法。また、それによる行動。」

葬儀とは礼法作法に則って死者を弔い、葬ることを意味します。

わが国の仏教の考え方では、「死」によりこの世(此岸)からあの世(彼岸)へ行くと考えられています。宗派により考え方に違いはありますが、葬儀は故人が成仏して彼岸である浄土へ行けるように送り出す儀式です。
では葬儀は誰のために行うものでしょうか。故人はもちろんのこと、残された人たちのためのものでもあるのです。大切な人を亡くしたときの悲しみは、筆舌に尽くしがたい思いを抱えることになります。場合によっては、永遠に消えることのない深い傷となって残ってしまうかもしれません。死者を悼み、死を受け入れ、死者に祈るために葬儀を行うのです。葬儀を行うことで、故人との今生での別れを告げ、故人の分も精一杯生きていくことを約束することで、悲しみを少しずつ乗り越えられることでしょう。

葬儀と通夜、葬式、告別式、葬祭との違いは?

広義の「葬儀(通夜・葬儀・告別式)」と狭義の「葬儀」

総称して、広義の「葬儀」

狭義の「葬儀」

葬儀は二日間に分けて行うのが一般的で、初日に通夜、翌日に告別式を行い、その後に火葬という順番です。通夜では故人と縁があった方々が故人を囲い、故人についての思い出話などを語ります。告別式では、故人と最後のお別れをする儀式として行います。葬式とは、死者を葬る(ほうむる)儀式であり、すなわち葬儀と同義です。以下、葬式は用いず「葬儀」と呼びます。葬祭は葬儀後に行われる初七日法要や四十九日法要、一周忌などの回忌法要などの祭祀(葬祭の「祭」は先祖をまつること、いわゆる法事を表します。)と葬儀をあわせた言葉です。

2. 葬儀の流れ

①ご逝去
病院で亡くなると医師から死亡診断書を受け取ります。自宅で亡くなった場合は、事件性が問われるような場合は警察に連絡することになりますが、そうでなければ救急車を呼び、そこで死亡診断書を出してもらいます。

②菩提寺・葬儀社に連絡
菩提寺がある場合には菩提寺に連絡します。そして葬儀社を選定し連絡をします。事前に葬儀社が決まっていない場合は、知人の伝手(つて)やインターネット等で調べて依頼することになります。病院で亡くなった場合は、病院が提携している葬儀社を紹介してもらうケースもあります。
※葬儀社には、主に、割賦販売法に基づいて許可され冠婚葬祭を広く扱う「冠婚葬祭互助会」と、葬儀専門業者である「葬儀社」があります。

③安置
葬儀社が逝去場所に来てくれます。逝去場所が病院の場合は、遺体を病院から安置場所まで搬送してもらいます。自宅の場合は、そのまま自宅で安置するか、あるいは自宅安置が難しい場合は葬儀社にお願いして安置場所まで搬送してもらいます。

④葬儀社と打ち合わせ
葬儀社と打ち合わせを行います。葬儀の形式や宗教者の手配が必要かどうかの確認を行います。この時点で葬儀の日程とおおよその葬儀費用が明らかになります。

⑤通夜
打ち合わせで決めた通りの日程でまずはお通夜を行います。家族や親族に加え、故人と生前親しかった方々と一緒に、故人の思い出などを語り合います。

⑥葬儀(狭い意味での「葬儀:ほうむる儀式」)
通夜の翌日に葬儀と告別式を行います。宗旨宗派によって異なりますが、仏式であれば僧侶の読経、神道であれば神官の祭祀や祈祷、キリスト教であれば聖書の朗読や讃美歌の斉唱、お祈りを行います。

⑦告別式
葬儀のあと、告別式を行います。告別式は焼香や玉串奉奠(たまぐしほうてん)、祈祷、献花などを通じて最後の別れを告げるセレモニーとなっています。告別式終了後に火葬場に向かいますが、火葬後に葬儀・告別式を行う地域もあり、前火葬・骨葬と呼ばれます。

⑧火葬
葬儀後に火葬を行います。なお、火葬後に拾骨し、骨壷に遺骨を納めて終了となります。火葬には火葬許可証が必要です。

相続財産から葬儀費用を支払うことはできるの?

法定相続人全員の同意書があれば金融機関の故人の口座から引き出すことは可能ですが、全員の同意書が無くても引き出すことは可能です。金額には制限があり、下記2つの金額の少ない方となります。

①相続開始時の預貯金残高の3分の1×相続人の法定相続分
②150万円

 歴史 

葬儀の歴史

人が死を認識し、死者に思いを馳せ、儀礼を行うようになったのは、日本国内に限って言えば旧石器時代だと言われています。お墓をつくって赤色顔料を塗ったり、石器類や装身具などの副葬品を添えていた形跡が見つかっています。
縄文期になると多様な埋葬形態が見られるようになります。土器や石、木などで棺を作るようになり、屈葬や伸展葬(いずれも遺体を納めるかたち)なども行われました。
弥生時代には大陸より伝来した支石墓や箱式石棺墓など、墓の構造から社会階層の複雑な分化もうかがえました。
そして古墳時代に首長のための巨大なお墓がつくられます。死してなお権威や威厳を保つために埋葬が利用されるようにもなりました。
しかし7世紀以降は仏教の浸透とともに古墳はつくられなくなります。「遊部(あそびべ)」と呼ばれる天皇の葬礼に際して葬儀に必要な祭器などを用意する部民・氏族が生まれ、火葬も徐々に広がります。大宝3(703)年に持統天皇が初めて天皇として仏式で火葬されたとされています。平安時代までわが国には葬儀という風習はなく、「遺棄葬(風葬)」が主流でした。行基などの僧が火葬の普及に影響したと言われ、後の鎌倉時代に仏教の僧たちによって庶民にも広がったようです。
12世紀以降は各地で共同墓地がつくられるようになります。それとともに葬送の過程で僧侶が死者の追善を行うだけでなく、葬儀の実作業にも関わるようになりました。
江戸時代には寺請制度が定められ、仏式葬儀が徹底化され庶民にも普及し、現代にも当時の影響が残っています。

注)なお第41代持統天皇は697年崩御の説の他、702年に崩御し、殯期間が1年で703年に埋葬された説もあります。(697年:出所『天皇と葬儀』より)

3. 葬儀に関連する法律

葬儀に関連する法律を紹介します。

逝去時

戸籍法では、逝去時に家族や近親者による死亡届の提出を義務付けています。具体的には届け出る義務を負った方は亡くなった事実を知った日から7日以内に、また国外で知った場合は3ヵ月以内に死亡の届出を行わなければならないと定められています。

葬儀後

人が亡くなると相続が行われます。相続と聞くと財産がある方だけが対象と思われがちですが、多い少ないに関係ありません。仮に財産が少なかったとしても故人が所有していた遺産や権利を相続人に名義変更しなければならないのですが、こういったことも相続に含まれます。また、もし債務だけが残っている場合は、相続人は債務から免れるためには相続放棄をすることもできます。しかし、債務もあるけれど資産もそれなりにあるという場合は、簡単に相続放棄という決断はできません。資産が債務を上回れば、相続する選択が多いでしょう。
もしも一定以上の財産を所有していた方が亡くなった場合は、遺言の有無の確認や執行、相続税の納付などの義務も発生します。またお墓や仏壇などの祭祀財産も義務ではありませんが一般的には承継します。信頼のおける方や専門家の方に相談されるとよいでしょう。

埋葬・納骨

埋葬や納骨、火葬については「墓地、埋葬等に関する法律」が定められており、その第2条で埋葬をはじめ火葬、改葬、墳墓、墓地、納骨堂、火葬場の定義やその方法を明らかにしています。
また墓地や納骨堂、火葬場を新設するには、都道府県知事の許可を受けなければならないとされています。第3条では、個別具体的なケースを除いて、人は死後、24時間経過した後でなければ埋葬・火葬はしてはならないとされています。

その他

その他に刑法では、礼拝所及び墳墓に関する罪や、死因究明においては刑事訴訟法や死体解剖保存法で、墳墓の発掘や死体の解剖が認められています。ちなみに死因が明らかになったあとは角膜や一部の臓器を移植することも認められています。

葬祭扶助の制度

生活保護法の第18条では葬祭扶助が定められています。これは生活保護を受給している方や、経済的に困窮されている方が葬儀費用の捻出が難しい場合に、国が葬儀費用を一部負担してくれる制度です。

礼拝所不敬罪とは

令和2年12月、ある人が動画撮影をしながら墓地の墓碑に土足で上がったという容疑で逮捕されました。罪名は礼拝所不敬罪でした。礼拝所不敬罪とは、刑法第188条1項に規定されている犯罪で、条文上「神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者」を罰するものとされています。礼拝所不敬罪の法定刑は、6か月以下の懲役もしくは禁錮、または10万円以下の罰金です。

4. 葬儀の形式

葬儀にはいくつかの形式がありますので紹介します。

一般葬

一般葬は、家族や親類以外の友人知人、会社関係者、ご近所、町内会関係者など、幅広くお呼びする葬儀となります。場合により、会社の同僚の方が「受付」等を担うケースなども見られます。

家族葬

家族葬は、家族や親類を中心に行う葬儀を指し、故人と親しくしていた方を含める場合もあります。

一日葬

一日葬は、通夜を行わず、葬儀式と告別式だけを行う葬儀です。

直葬・火葬式

直葬は「ちょくそう・じきそう」と読みます。直葬・火葬式とは、通夜や告別式を行うことなく、逝去後24時間安置したあとに火葬場にご遺体を運び、火葬するという葬儀です。

社葬・合同葬

社葬とは、文字通り会社が施主となって行う葬儀です。社葬は会社が施主となるため、創業者や社長、会長など、その会社の発展に大きく貢献した人が亡くなった際に行うのが一般的です。会社が遺族と共同、または複数の会社が施主となる場合には葬と呼びます。

密葬

著名人や会社代表などが亡くなり、会社等が本葬やお別れの会などを行う場合、遺族などの近親者だけで事前に行う葬儀を密葬といいます。

5. 葬儀の費用

葬儀の費用は、葬儀の形式や規模によって異なります。なお、葬儀の平均費用は195.7万円程度と言われています。内訳は、基本料金(葬儀費用単体)121.4万円、飲食等30.6万円、寺院47.3万円となります。
出所:(一財)日本消費者協会調査(2016年調査)

大切な人の死は人生の中でも大きな苦しみで、人生の試練でもあります。大切な人との時間は永遠に続いてほしいと思いますが、時間は有限で、必ず別れは訪れます。
仏教ではその苦しみを「愛別離苦」と呼びますが、葬儀にはそのような苦痛や喪失感を和らげてくれる効果があります。近年、葬儀が果たすグリーフケアの意味があらためて重要視されています。葬儀や法事、伝統的な宗教儀礼は簡易化、縮小化が見られますが、改めて葬儀が果たす役割を考えてみるのはどうでしょうか。