通夜(喪主側)
なぜ通夜を行うの?
通夜は、葬儀の前に故⼈と最後の夜を過ごす儀式です。本来は、故⼈を埋葬する前に家族や親族、知⼈が集まり、夜通し灯明と線⾹を絶やすことなく、死者に寄り添い守ることがその⾔葉の由来といわれています。古の習慣では、故⼈の臨終からしばらくは納棺せず、ご自宅の布団に寝かせていました。その枕もとで経を読み(枕経)、故⼈が仏となることで死者としての扱いが始まりました。通夜は⽣きていた⼈が死者となる過程で、その死を社会的に認知する、あるいは残された⼈々が死を実感するための猶予の儀礼といえるでしょう。元来、通夜は身内だけのお別れの場でしたが、昭和の時代に入り、昼間に行われる葬儀式や告別式に仕事などで会葬できない方々を気づかって、葬儀前夜の弔問を中⼼とした儀式と考えるようになってきました。通夜では、故人の思い出を語り合い、故人の功績を称えるなど、故人との別れを惜しみ冥福(仏式)を祈る気持ちを大切にしましょう。
CONTENTS
1. お通夜の日取り
2. お通夜の時間
3. お通夜の手順
4. 遺族・親族の装い
5. 持ち物
6. 宗教・宗派による違い
1. お通夜の日取り
ご縁の深い方にご連絡
親類縁者、ご縁の深い方にお知らせしてください。ちなみに、一般的に連絡先の優先順位とされているのは以下のようになります。
- 家族・親族(三親等くらいまで)
- 故人の友人、知人、会社関係、学校関係など
- 遺族の関係者(友人、知人、会社関係、学校関係など)
- 隣近所・町内会(特に自宅で葬儀を行う場合)
お付き合いのある菩提寺や所属する教会がある場合は、葬儀へのお勤め(仏式)や礼拝の相談をしておきましょう。
お通夜の前にやっておくこと
喪主や遺族は、葬儀社の担当者と通夜の段取り、特に焼⾹や喪主のごあいさつ等のタイミングなどを確認しておきます。また、供花・芳名板(芳名板)の並び順なども、受付がはじまる前に確認しましょう。
用語説明 芳名板:供花を贈った方の名前や所属・肩書が書かれる板。
2. お通夜の時間
夜通しという本来の意味のお通夜は少なくなっており、最近では日付が変わらないうちに儀式を終える短時間のお通夜が増えています。これを半通夜と呼び、午後6時ごろから始め、9時、10時(1~3時間程度)を目途に終了します。その間、お線香が絶えないようにあげ続け、故人に冥福(仏式)を祈ります。
歴史
100年前までの通夜は宴会だった?!
通夜の起源は「釈迦の死を悲しんだ弟⼦たちが、遺体を⾒守りながら、これまでの説法について語り合った」という説があります。日本の古い時代にも、殯(もがり)と呼ばれる儀式がありました。故人が亡くなってから本葬するまでの期間、死者を安置して見守るものです。これは主に死亡を物理的に確認するために行われていましたが、故人のことを考え、その魂を慰めながら故人とともに過ごすという通夜の原点だと言われています。
長らく日本の習慣では、故⼈の臨終後は布団に寝かせ、枕経を行い、ご遺体を入浴させる湯灌をしたあとで納棺という運びでした。湯灌には死者を沐浴させ、浄化するという意味がありますが、多くの地域ではそれは遺族の重要な役割でした。時を経て明治以降感染症対策や公衆衛⽣的な観点から、消毒薬などで遺体を拭くようになり、病院で亡くなる⽅が増加するにつれ、看護師による遺体の清拭が湯灌に代わるようになりました。また今日では、遺体安置施設の普及により自宅に遺体を安置することも少なくなり、臨終から納棺、通夜までの遺族の役割も変わってきています。
明治・⼤正期までの通夜は、東京のような⼤都市でも夜通しの由来通り、近しい(親しい)⼈たちが集い⼀晩、地域によっては⼆晩続けて丸通夜が⾏われていました。現在のしめやかな雰囲気とは違い、酒⾷も振舞われ賑やかなものもあったようです。昭和に⼊るとこうした形態は⾏われなくなり、近しい関係者以外の⼈も含め弔問を中⼼とした会葬者の儀礼の意味合いが強くなっていきました。戦時体制を経て、厳粛性を持つしめやかな、そして時間限定で儀式的な「半通夜」が浸透していきました。その後⾼度経済成⻑期以降、⾃宅で⾏われていた通夜や告別式を寺院で⾏うようになり、やがて現代の葬儀場や斎場で⾏う葬儀前夜の弔問を中⼼とした⼀儀礼と認識されるようになりました。
3. お通夜の手順
通夜の進行は、多くの場合葬儀社が行います。基本的にお任せできますが、自宅でお通夜をする場合、宗教的な違いがある場合などは、事前にしっかりと打ち合わせをしておきましょう。
仏式の場合の式次第
①受付から通夜の開始まで
参列者の受付は開始時間の30分~1時間前くらいから始めます。人手があれば、世話役(全体の進行管理など)、受付係(記帳、ご案内)、会計係(香典の記帳、保管)を決め、参列者への対応をしてもらいます。通夜振る舞いの数量なども、受付での人数から決定しますので、しっかりした人を選ぶ必要がありますが、葬儀社の担当者も慣れていますので任せることもできます。
②一同着席
通夜の席次は、祭壇に向かって右側に喪主、遺族、近親者などの席、左側に葬儀委員長、世話役を含め、友人・知人・関係者といった弔問客の席、というのが一般的です。
③僧侶の入場、読経
喪主、遺族、参列者がおおむね着席し、僧侶が入場するとお通夜が始まります。読経は20分から1時間程度。その間に焼香する流れになります。
④焼香
僧侶、喪主、親族、一般参列者の順で焼香します。社葬などの場合は、葬儀委員長から始めるのが習慣的です。
⑤僧侶の退場
読経と焼香が終わると、僧侶は控室に戻り、通夜振る舞いの席へ案内されます。参加を断った場合は、食事の代わりに「お膳料」「お車代」をお渡しすることが多いです。
⑥通夜振る舞い
読経や焼香が終わった後、弔問客、お⼿伝いいただいた⽅に、⾷事や酒などの通夜振る舞いを行います。これは、弔問客への感謝や僧侶への慰労の気持ちを表すとともに、故人との最後の食事という意味があります。かつては仏教の戒律を守る修行僧の食事である、肉や魚を使わずに野菜や豆腐を中心に用いた精進料理が一般的でした。地域により作法は異なりますが、例えば東京では参列者は全員、通夜振る舞いの席に招かれることが多いです。その場では、ご供養の意味でも⼀⼝でも箸をつけるのがマナーとされています。
⑦お開き
通夜振る舞いの席で故人を偲び、予定の時間がきたら、喪主のあいさつがありお通夜はお開きとなります。
喪主や遺族など、喪に服している人は参列者の見送りを行いません。
神式の場合の式次第
神式では、通夜は神社では行わず、「通夜祭」と「遷霊祭」を自宅や斎場で行います。
自宅に神棚がある場合は、前面に白い半紙を貼って覆います。
通夜祭
①手水の儀
柄杓を右手で持ち左手に水をかけます。次に柄杓を左手に持ち替え右手に水をかけます。再度左手に持ち替え、左手で水を受けて口をすすぎます。
②参列者着席
祭壇に向かって右側に喪主、遺族、近親者が座り、左側に世話役、親族が座ります。一般の参列者はその後ろに座ります。
③斎主・斎員入場、拝礼
斎主(神官)が一拝したら参列者も一拝します。
④饌(ぜん)を供える
斎員(世話役)が故人の好きだった饌(食べ物)を祭壇に供えます。
⑤祭詞奉上(さいしほうじょう)
斎主が祭詞を奉上し、一同は腰を折るように一拝します。
⑥誄歌奉奏(るいかほうそう)
伶人(雅楽を演奏する楽士)が故人を追慕する歌を奉奏します。
⑦玉串奉奠(たまぐしほうてん)
斎主、喪主、遺族、親族、一般の順に、二拝・しのび手で二拍手・一拝します。
⑧撤饌
斎員が饌を下げ、斎主が一拝し参列者一同も拝礼します。斎主・斎員が退場し、喪主が挨拶して終了となります。
遷霊祭
通夜祭に続けて行われ、故人の御霊を霊璽(れいじ)に移す儀式です。夜間、室内の明かりを消して行います。
①消灯
会場を消灯します。
②遷霊詞奏上
斎主が棺の前に安置してある白木の霊璽を棺の方に向けて、遷霊詞を奏上します。
御霊代に魂が移り、故人が神様となります。
③献灯
会場の明かりをつけ、参列者が御霊代の前に集まります。
④玉串奉奠
斎主による祭詞奏上に続き、玉串奉奠、拝礼を行います。
⑤終了
全員の玉串奉奠、拝礼が終わると終了です。
⑥直会
通夜振る舞いにあたる宴席「直会(なおらい)」を行います。
キリスト教式の場合の式次第
キリスト教式では、故人が通っていた教会または斎場で行うのが一般的です。カトリックでは「通夜の祈り」あるいは「通夜の集い」といわれる儀式、プロテスタントでは、「前夜祭」あるいは「前夜式」といわれる儀式が行われます。聖歌や讃美歌、祈りの言葉などは信仰者以外には知られていないため、プリント等を用意して参列者に配布するとよいでしょう。献花には白い花が使われます。
カトリックの進行例
①はじめの言葉
②聖歌斉唱または黙祷
③招きの言葉
④聖書朗読
⑤説教
⑥ともに祈る
⑦献香・献花
献香とは神父が祭壇や棺の周辺に香をふりかける儀式です。聖水に木の枝を浸し、棺の中央、左、右に3回かけることもあります。
⑧結びの祈り
⑨遺族代表の挨拶
⑩茶菓や軽食をふるまう茶話会
プロテスタントの進行例
①前夜祭開式宣告
②讃美歌斉唱
③聖書朗読
④祈り
⑤讃美歌斉唱
⑥説教・故人を偲ぶ話
⑦祈り
⑧讃美歌斉唱
⑨献花
⑩遺族代表の挨拶
⑪茶菓をふるまう偲ぶ会
地域の特色ある風習
千葉県やいくつかの地域では、通夜のことを「伽(とぎ)」と呼んでいます。伽とは付き添うことを意味し、死者と共に過ごすということが重要であったことがわかります。通夜振る舞いにも地域によって違いがあります。関東では一般的に参列者全員に食事をふるまうことが多く、関西では遺族や親族などの親しい間柄だけで食事をすることが多いようです。
4.遺族・親族の服装
参列者と異なり、喪主側の服装は、喪服となります。また、地域差もありますが、お通夜では略式の喪服、色喪服(グレー、紺、紫、深緑、臙脂、茶系などの控えめな色)でもよいという考え方もあります。和装、洋装はどちらでも構いません。最近では着物の喪服はご家族が着ることが多いようです。
男性
- 洋装
黒のスーツ 白のワイシャツ 黒のネクタイ 黒の靴下 黒の靴 - 和装
黒っぽい無地の小紋の着物 喪服の正礼装は五つ紋の羽織・袴(三つ紋、一つ紋の順に格が高いが、いずれも準礼装であり、喪服に入れる場合は格から五つ紋となる)
女性
- 洋装
洋装喪服、黒無地のワンピースまたはツーピース - 和装
黒喪服。関東では羽二重に染抜きの五つ紋、を弔事の礼装としますが、関西では一越ちりめんを用いることが多いようです。足袋は白、帯揚げや小物、草履などは黒でまとめましょう。五つ紋の黒無地(黒喪服)がない場合には、黒色の色無地、地味な色無地の一つ紋は略喪服とみなされます。
5. 持ち物
通夜、葬儀を通して、喪主側が持つ必要のあるものとして、数珠(仏式の儀式の場合)、ハンカチ、バッグ、メモ帳とペンは、すぐに使える状態でお持ちください。
6. 宗教・宗派による違い
お通夜の流れは、故人の信仰する宗教によって、仏式・神式・キリスト教式等に分かれます。信仰を通してお付き合いのある僧侶、神主、神父、牧師の方と、生前から「もしもの時」に備えてお話をしておくとよいでしょう。