葬式のスタイル

規模や費用、宗旨宗派などで分類できる葬式のスタイル

葬式には様々なスタイルがあります。そのスタイルは規模や費用、宗旨宗派などで分類することができます。
葬式のスタイルは規模によって変化します。一般的な関係者に広くご案内するお葬式(一般葬)、家族や親族、親しい方を中心とした家族葬などが多く見られますが、火葬のみを行う直葬(火葬式)などの形態もあります。社葬や著名人のお別れの会などは参列者の人数も範囲も広く、数ある葬式スタイルのなかでも最も大きい規模の葬式となります。
宗旨宗派でも葬式のスタイルは異なります。宗旨とは、仏教や神道、キリスト教、イスラム教などの各宗教を意味します。(なお、宗旨という言葉には宗派という意味も含みます。)宗派とは仏教であれば浄土宗や浄土真宗、禅宗(曹洞宗、臨済宗)、真言宗、日蓮宗などを指します。宗旨宗派によって葬式のスタイルは大きく変わります。

CONTENTS
1. 規模で分類する葬式スタイル
2. 宗旨宗派で分類する葬式スタイル
3. 会場で分類する葬式スタイル

1. 規模と方式で分類する葬式スタイル

葬式のスタイルは規模で分類することができます。規模とは参列者の人数やお呼びする範囲、通夜や告別式などを行うかどうかで決まります。

一般葬

一般葬は通夜や告別式を行い、かつ参列者としてお呼びする範囲も限定されていないため、規模は大きくなる傾向があります。知人友人や会社関係者、ご近所、町内会関係者など、お呼びする範囲は広く、どこまでお呼びするかによって、規模が決まります。

家族葬

家族葬は、一般的には通夜も告別式も行います。そのため直葬・火葬式や一日葬に比べて比較的規模は大きくなりますが、参列者としてお呼びする範囲が家族や親戚親族に限定されるという特徴を持っているため、そこまで規模が大きいとは言い難いでしょう。

一日葬

一日葬は、通夜は行わず、葬儀と告別式を行う葬式スタイルです。夕刻から告別式を行う場合もあります。

直葬(ちょくそう・じきそう)・火葬式

直葬・火葬式は、通夜や告別式を行わないため全ての葬式のスタイルの中でも最も規模が小さいです。

社葬

社葬は、創業者や社長、取締役など、その会社に多大なる貢献をもたらした方の葬式スタイルです。そのため家族や親戚親族はもちろん、その会社と取引先や関係各所などまで含めて、非常に大きい規模の葬式スタイルとなる傾向があります。一般葬よりも更に規模が大きくなる社葬は、施主が会社となるため、ご遺族が葬儀費用を負担することはありません。

合同葬

会社が遺族と共同、または複数の会社が施主となる場合には合同葬と呼びます。

密葬

著名人や会社代表などが亡くなり、会社等が本葬やお別れの会などを行う場合、遺族などの近親者だけで事前に行う葬儀を密葬といいます。

直葬が増えている?

高齢化が進み以前のよう大家族的な親族が集まりにくく、会社勤めの人が昼間の葬儀や告別式に会葬しにくい状況も影響し、葬式への会葬者が減るとともに香典の額も減少しています。また核家族化の影響で施主・喪主ともに妻が務めることが増え、大きな費用をかける一般葬は経済的にも難しくなっています。そのような状況の中、家族葬が増え、手間と費用のかからない直葬も都市部を中心に増加しています。しかし、葬儀は単なる儀式ではなく遺された人にとっても大切な儀式です。どんなスタイルであっても、ていねいに考え、ていねいに行われる儀式であることを心がけましょう。

 歴史 

葬式のスタイルが多様化していった経緯

葬式のスタイルはお呼びする方々の範囲や規模で分類されるとお伝えしましたが、1980年代までは通夜翌日に葬儀式と告別式を行い、その後に火葬するという形式の葬式が圧倒的な割合を占め、お呼びする方々の人数も範囲も制限することなく行うことが通例でした。
このような形式になったのは昭和初期から中期だと言われていますが、高度経済成長を経て、夜通しの通夜から半通夜と呼ばれるスタイルに変わり、告別式は自宅告別式から会場(斎場、会館、集会所、寺院、教会など)で行うような葬式スタイルに変化していきました。
昭和後期から平成、令和となった現在は核家族化が進んだことと単一世帯の増加や高齢化によって、臨終を迎える場所は自宅ではなく病院や施設が圧倒的に増えました。 儀式に関する意識の変化、進む高齢化、個の重視なども葬式のスタイルに影響を与えています。また、寺院に属さないあるいは自分の寺院を持たない僧侶も登場し、葬儀会社等からの依頼で葬式や法要で経をあげる住職派遣サービスも生まれています。葬式の依頼先が寺院ではなく葬儀会社に変わりつつある点も、葬式スタイルの多様化に影響していると言われています。

2. 宗旨宗派で分類する葬式スタイル

葬式スタイルは宗旨宗派でも異なります。

仏式の葬式スタイル

仏教で行う葬式を仏式葬儀といいます。仏式のマナーやスタイルは宗旨宗派によって異なります。仏教は8つの宗旨宗派が伝わったとされています。伝来した8つの宗派とは南都六宗の華厳(けごん)宗、法相(ほっそう)宗、三論(さんろん)宗、成実(じょうじつ)宗、倶舎(くしゃ)宗、律宗(りっしゅう)の各宗に北京(ほっきょう:京都)の天台宗・真言宗の2宗です。伝来した8宗とは別に、1940(昭和15)年に宗教団体法が施行された時点では、既に存していた公認の仏教宗派は56派(神道教派は13)となっていました。

神式の葬式スタイル

神式は神道を信仰する方々の葬式スタイルで、別名で神葬祭(しんそうさい)とも呼ばれています。神葬祭は亡くなった方を先祖と共に家庭の守り神として奉るための儀式でもある関係上、自宅で葬式を行います。神社などで葬式は行いませんので注意しましょう。

キリスト教の葬式スタイル

キリスト教の葬式は教会で行うのが一般的です。またカトリックとプロテスタントでも葬式のスタイルは異なるので注意が必要です。

その他の宗教の葬式スタイル

世界の三大宗教はキリスト教、イスラム教、仏教で、2020年調査では全体の6割強(出所:冠婚葬祭データブック2021年版)を占めています(なお、同時点でのヒンドゥー教比率は15%と3位で、仏教徒より多い)が、他にも多くの宗教が存在しています。各宗教によってスタイルやマナーは大きく異なります。

その他のスタイル

自由に歓談するスタイルや故人が好きだった音楽を流すなど無宗教で行う葬式スタイルもあります。また、納骨のスタイルとして、海洋葬や樹木葬などもあります。

3. 会場で分類する葬式スタイル

葬式のスタイルは会場によっても異なります。

自宅葬

自宅葬は文字通り、自宅で葬式を行うというスタイルです。

会館葬

葬儀社が所有する葬儀会館や、貸式場や貸会館で行う葬式スタイルを会館葬と言います。

斎場葬

自治体が運営する公営斎場や民間火葬場に併設された斎場で行う葬式スタイルを斎場葬と言います。

集会所葬

団地やマンションなどの集合住宅にお住まいの方が亡くなった際に、そのお住まい付近に併設されている集会所で葬式を行うことがあります。これを集会所葬といいます。

寺院葬

寺院葬は、檀家となっている菩提寺など、寺院で行う葬式スタイルです。

教会葬

教会葬は、キリスト教徒の方が教会で行う葬式スタイルです。

自宅葬とは?

かつては自宅で葬儀をあげる方も多く、近所の方がお手伝いに駆け付けた時代などもありました。現代でも、病院で長く闘病生活を続けた故人を、せめて火葬する前に自宅に帰して、自宅から葬儀を出してあげたい、という例があります。しかし、現代の住宅事情では、スペースの面や、一戸建てであっても、ご近所に迷惑をかけたくないなどから、諦めざるを得ない場合もあります。家族中心で小規模の場合は、自宅でお見送りすることで、心のこもったお葬式が可能です。

時代で変わってきた葬式スタイル

江戸時代以降の寺請檀家制における葬式は、1970年代からそのスタイルを大きく変えてきました。大きく分けると以下のような変化です。

  • 土葬から火葬へ
    都市化による衛生習慣や土地の状況により、土葬から火葬へと変化しました。
  • 葬列(野辺送り) → 告別式
    土葬から火葬への変化により、自宅で葬儀を行った後に遺体を埋葬場まで運ぶ葬列が減少し、親族以外の会葬者が葬列に参加できなくなり会葬者が集う告別式が増加。
  • 葬式組 → 葬儀社
    地域共同体である葬式組や講中の流れをくむ集団が中心で行われていた葬式が、地域社会でのつながりが希薄になり、代わりに葬儀社が担うようになった。

葬式のスタイルは費用や場所、宗教色の有無だけでなく、お呼びする参列者やその範囲によって異なります。1980年代の葬式のスタイルといえば、大きな斎場を借りて、数百人単位で行うような大きな葬式が一般的でしたが、現在は家族葬を始め、費用や規模別の選択肢も豊富となり、故人だけでなく遺族にとっても要望に対応してもらいやすい状況となっています。
事前にどんな葬式にするかを検討することで、更に細かい設定も可能となるでしょう。いざというときに慌てないようにするためにも、終活等に興味がある方は一度葬儀社に相談してみるのもおすすめです。