危篤・臨終
危篤や臨終とは?葬儀までの流れは?
危篤(きとく)とは、病気や怪我などを理由に、生命に危機が迫っている状態で、回復する可能性がかなり低い状態を意味します。そして臨終(りんじゅう)とは、死に際、あるいは亡くなることそのものを意味します。
危篤や臨終は医師から伝えてもらうのが一般的です。そして危篤から臨終に至るまでの時間は2〜3日の場合もあれば、1週間程度など人それぞれですが、危篤であることを告げられるとどんなに覚悟をしていたとしても、心の動揺は免れないでしょう。しかしそれでもやらなくてはならないことがあります。
そこで危篤や臨終であることを知った時点でやるべきことや、その後の葬儀までの流れ、そしてグリーフケアの必要性について紹介させていただきます。
CONTENTS
1. 危篤・臨終とは
2. 危篤や臨終で知らせるべき人たちと優先順位
3. 危篤や臨終で備えておくべきこと
4. 危篤から臨終、そして葬儀までの流れ
5. 求められるグリーフケア
1. 危篤・臨終とは
危篤とは、病気や怪我などによって、生命に危機が訪れている状態です。危篤かどうかは多くの場合において医師が判断します。
臨終とは、人の死に際、人が亡くなること、死に向かうこと、今際(いまわ)の際(きわ)を意味します。臨終かどうかの判断は医師が行います。
医師によって法的に死が確定した後に、医師は死亡診断書(亡くなった方の氏名や生年月日、死亡日時、死因、死亡した場所を記載)を発行します。
歴史
医学が未発達だったころの曖昧な死亡判定
現代では人が死んでいるかどうかの判断は、医学的にも法的にも明らかにされていますが、医学がまだ未発達だった頃は、その基準が曖昧でした。
医学的に死んでいるかどうかの判断が曖昧だったことによって、仮死状態であった人を亡くなっていると判断して埋葬してしまったりすることがありました。また亡くなっていると思いこんで安置していると、息を吹き返すこともあったようです。
かつてはこのようなことが起きたことから、生き返る可能性があったので、通夜が誕生したと言われています。現代の通夜ではなくなりつつありますが、当時の通夜は寝ずに遺体に付き添うのが一般的で、これを寝ずの番と呼ぶようになりました。
2. 危篤や臨終で知らせるべき人たちと優先順位
危篤や臨終は緊張と不安をもたらします。しかしそれでもしなければならないことがあります。危篤と臨終によって冷静な判断が難しい可能性がありますが、事前にすべきことを知っておくことで、いざというときにも慌てずに対応できるでしょう。
【危篤ですべきこと】
(1)身近な方々へ連絡
連絡するべきかどうかは「三親等の方々」と「最期に立ち会っていただきたい方」「故人が生前大切にされていた方」などで判断すると良いでしょう。
(2)職場などへの連絡
・危篤のご本人の会社の場合
危篤になった方がどこかにお勤めになっている場合は、その勤務先にも連絡すると良いケースもあるでしょう。
・危篤の方のご家族の会社の場合
もしも臨終を迎えた場合、ご家族(後のご遺族)も仕事を休まなければならないことが懸念されますのでご家族自身の職場にも連絡をしておくと良いケースもあるでしょう。
【臨終ですべきこと】
臨終を迎えた際に連絡するべき人は【危篤ですべきこと】の(1)でお伝えした「身近な方々」への連絡に加え、それ以外にもすべきことがあります。
(1)自宅での臨終
自宅で亡くなっているように見える場合は、急いで救急車を呼び、亡くなっている場合は医師から死亡診断書を受け取ります。
(2)病院で臨終
病院で臨終を迎えた場合は、医師が死亡判定を行い、死亡診断書を発行してもらいます。
(3)その他の場所での臨終
交通事故などその他の場所で亡くなっているように見える場合は、救急車と警察を呼びましょう。病院に搬送され、病院で亡くなった場合は、(2)病院で臨終を迎えたのと同様の流れとなります。
警察を呼ぶケース
自宅や病院以外の他の場所で亡くなられた場合であっても、不自然で事件性が疑われる場合には警察を呼ぶとよいでしょう。事件性の有無や死因を明らかにするために、警察によって検死・検案、場合によっては司法解剖が行われます。これらは遺体の損傷度合いなどによって要する時間は異なりますが、終了後に死体検案書が発行されます。これが死亡診断書の代わりとなります。
感染症に感染して死亡した場合などは感染症対策を目的に、遺体を納体袋と呼ばれる袋に収めることがあります。死体検案書の発行手数料は警察により、納体袋は病院や葬儀社などによって価格が異なりますので、これらも葬儀費用の一部となります。
3. 危篤や臨終で備えておくべきこと
危篤や臨終による精神的ショックから冷静な判断が難しくなる可能性があります。しかし事前に備えておけば、少しでも冷静さを取り戻すことができるかもしれません。危篤や臨終の際に必要となることを以下に箇条書きでお伝えします。
- 死亡診断書を受け取る
- 関係各位に連絡する
- 病院の支払いをする
- 葬儀社を決めておく(臨終後は間もなく病院から遺体を搬送しなければならないため)
- 檀家の菩提寺がある場合は、菩提寺に連絡する
病院と提携している葬儀社
人が亡くなる場所として真っ先に思いつくのが病院ですが、臨終後の病院は時間的にも精神的にも、そこまで余裕を持って対応させてもらえません。なぜなら病院は治療を必要とする患者さんの治療を優先するために、病床を空ける必要があるからです。そのため、臨終後は比較的すぐ「葬儀社はお決まりになっていますか?搬送はいつになりますか?」と尋ねられます。その際に葬儀社が決まっていない場合、「とりあえず搬送だけでもいかがでしょうか」という感じで、病院と提携している葬儀社を紹介されることがあります。
葬儀費用は安くありません。搬送をお願いした時点で費用は発生します。そして葬儀社を急ぎ決めざるを得ない状態になることも十分考えられます。後々後悔することがないように葬儀社は事前に決めておくことをおすすめします。
4. 危篤から臨終、そして葬儀までの流れ
危篤から臨終を迎え、そして死亡した後に葬儀となります。具体的にどのような流れになるのかご紹介します。
危篤
医師から危篤であること、そう長くないことを伝えられます。
臨終
医師が亡くなっているかどうかの判定をし、死亡している場合は死亡診断書を発行してもらいます。
病院の霊安室
遺体を病院の霊安室に移します。
葬儀社に連絡
葬儀社に連絡をして、病院にお迎えに来てもらいます。
搬送と安置
病院から遺体を安置場所までお連れします。
遺体の安置と枕飾りの設置は、基本的に葬儀社が行ってくれます。
菩提寺に連絡
菩提寺がある場合には、菩提寺に連絡します。
葬儀社と打ち合わせ
安置の処置が完了した後に、葬儀社と打ち合わせをして、葬儀の内容や費用、日程を決めます。
葬儀
事前に葬儀内容や依頼先を決めている場合も、そうでない場合も、こちらの希望を伝え、葬儀を行います。
故人の旅立ちの準備
末後の水を与え、体を清め、死装束に着替えさせ、安らかな顔でお別れできるよう死化粧をして故人の旅立ちの準備をします。
●末後の水
釈迦が臨終の際に水を欲したという由来から、臨終、そして死を迎えたら、家族の手で行う儀式が「末後の水」です。故人の配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹と血縁の深い順に、脱脂綿を割りばしの先に巻きガーゼでくるんで糸でしばったもので、故人の唇を水で潤します。
●清拭
末後の水の後にご遺体を清めることを「清拭」と言います。アルコールをガーゼなどに含ませ体を拭きます。病院では看護師、自宅では葬祭業者が行ってくれます。
●死装束
清拭の後に白木綿に経文を記した「死装束」に着替えさせます。正式な死装束は経帷子(きょうかたびら)、天冠(てんかん)、白足袋、わらじなどになります。着物は左前に着せ、白足袋やわらじは左右逆に履かせます。死装束は白が基調で、白色は古来から死の象徴とされてきました。人は亡くなると浄土へと旅立つという考えから、巡礼者や修行僧が身につける経帷子を着せるよになったと言われています。宗派によって死装束が異なるので葬祭業者に聞くとよいでしょう。
●死化粧
最後に「死化粧」をほどこします。手足の爪を整え、髪をとかします。女性の場合は生前に使用していたメイク道具で生前のイメージに合わせた薄化粧をします。男性の場合はひげをそりファンデーション等で整えます。頬がこけて気になる場合は脱脂綿等を口につめてふっくらとさせます。ご遺髪やご遺爪を希望する場合は、死化粧の際に切ります。死化粧は病院の看護師や葬祭業者が行ってくれることもあります。
枕飾りと枕経
遺体の安置は一般的には北枕で頭を北にして寝かせます。遺体を安置したら枕飾りをします。枕飾りは宗教により異なります。仏式の場合は、枕経・枕勤めと呼ばれる故人の枕元で僧侶が読経する儀式があります。枕経に参加するのは親族・近親者のみで、服装は喪服ではなく平服でかまいません。
枕飾りの意義は、簡易的な祭壇を設置し故人を供養することです。故人の食欲や物欲を浄化する、あるいはこの世からあの世への旅立ちに、供養により魂が迷うことなく成仏するためと言われています。
●仏式の枕飾り
- 白木台または白色の布を掛けた台
- 花瓶(花)
- 一膳飯
- 水
- 燭台(蝋燭)
- 枕団子
- 線香
- 香炉
- 鈴
●神式の枕飾り
- 八足机(儀式で使う机)
- 三方
- 御霊代
- 花瓶(榊)
- 水
- 洗米
- 塩
- お神酒
- 燭台(蝋燭)
●キリスト教式の枕飾り
キリスト教には枕飾りという習慣はなく、日本では十字架や白い花、燭台、聖書、パン、水などを飾ることがあります。
- 白もしくは黒の布を掛けた台
- 燭台(蝋燭)
- 花瓶(白い花)
- 十字架
- 聖書
- パン
- 水
※カトリックの場合、「終油の秘跡」として聖油が置かれる場合があります。
5. 求められるグリーフケア
危篤から臨終、そして死から葬儀終了までの時間はあっという間に過ぎます。慌ただしくて、故人を亡くしたことの悲しさや寂しさなどについて、物思いに耽る時間すらなかったと話す人は少なくありません。そのような場合、精神的な疲労は葬儀終了後にやってきます。喪失感や悲しみ、嘆きなどの感情が一気に襲ってきます。そこで注目されているのがグリーフケアです。グリーフケアのグリーフは「grief」と書き、悲嘆、深い悲しみを意味します。グリーフケアとはその悲嘆をケアし、克服、消化し、心の安定を取り戻すことと定義されています。グリーフケアは、亡くなったという現実の重みを受け止め、悲しみを癒し、精神を安定させるためのアプローチです。