節分
節分ってなに?
節分(せつぶん)は季節の分かれ目のことで、かつては立春、立夏、立秋、立冬、それぞれの前日のことを節分と呼んでいました。現代では立春の前日のことだけを指して節分といいます。立春とは、二十四節気(にじゅうしせっき)のひとつで春のはじまりを表します。二十四節気とは、「春」「夏」「秋」「冬」の四季をそれぞれ6つの節に分けたものです。年に4回ある節分の中でも、特に立春前日の節分が重んじられているのは旧暦と季節の考え方に関係しており、旧暦では春が新年のはじまりであったことから、新しい年へと切り替わる2月の節分が大切な節目として重視されていたようです。節分の行事は、どれも簡単に取り入れやすいので、「季節を感じるイベント」としてご家庭で気軽に楽しんでいただけることでしょう。
1. 豆まき
豆まきは、邪気を払い、福を呼び込むことを目的とした、節分の中でも代表的な風習であり、家庭で気軽に楽しめる季節の行事です。日本では古来より穀物は「生命の象徴」とされ、厄除けの力があると信じられており、米や麦、ヒエ、粟なども使われていました。その中でも豆が主流になったのは諸説あり、農耕民族である日本人にとって豆は五穀の象徴で、神が宿ると信じられてきたという説や、豆を投げれば「魔を滅する」という語呂合わせに由来するという説、そして「暴れる鬼の目に豆を投げつけて鬼を退治した」という古くからの逸話に由来する説などがあります。
豆まきの行い方
節分に使われる豆は「福豆」と呼ばれ、縁起が良いものとされています。
行い方の一例を示すと次の通りです。
- 前日までに、炒った豆を枡に入れて神棚にお供えします。もちろんスーパーやコンビニで売られている炒り豆でも大丈夫です。神棚がない場合は、白い紙の上に豆を乗せて目線の高い位置に供えます。
- 鬼は深夜にやってくるといわれているため、豆まきは夜に行います。20時〜22時頃の間に開始するのが良いとされています。まずは家中の戸を開け放してから、豆まきをはじめます。福豆を入れた枡は左手に胸のあたりで持って、下手投げで右手でまくのが正式といわれています。
- 奥の部屋から順に、鬼を外に追い払うために「鬼は外!」と声をかけながら豆をまきます。まき終わったら、鬼を締め出し、福を逃さないように、すぐに戸締りをします。
- 次に、福を招き入れるために「福は内!」と声をかけながら、部屋に向かって豆をまきます。
- 1年の無病息災を願って全員で豆を食べます。豆は年齢の数、もしくは「年齢より一つ多く(=数え年の数)」食べます。
Q. 豆が苦手な人や、歳の数の豆が多くなってしまう人はどうしたらいいの?
代わりに「福茶」を飲むと良いでしょう。福茶は、昆布と梅干しと福豆を吉数の3粒を湯のみに入れて、熱湯に注ぐだけで簡単に作ることができます。昆布は「よろこぶ」、梅干しは「おめでたい松竹梅」を意味します。香ばしく優しい味わいで、縁起の良いお茶です。
なぜ炒り豆を使うの?
節分の豆は穢(けが)れや厄災を負うものといわれており、そこから芽が出るのは縁起が良くないとされています。そのため芽が出ないように、炒ったものを用意します。また、炒り豆はスーパーやコンビニなどにも売っていますので、自宅で豆を炒らなくても大丈夫です。
地域によって
豆の種類は違う!?
関東地方では大豆をまきますが、新潟県、福島県、北海道などの北日本や、産地である鹿児島県や宮崎県では殻付きの落花生をまきます。特に雪深い地域では、外にまいた豆が雪に埋もれてしまうことから、落花生が見つけやすいためとされています。
歴史
豆まきは元々中国の文化だった⁉︎
平安時代、年や季節の変わり目は世の中の秩序が変わり、鬼や魔物が生じると考えられていました。そこで邪気をお払いするために、大晦日に宮中行事として中国より伝来した「追儺式(ついなしき)」という行事を行うようになったことが儀式の元になったとされています。追儺式とは、貴族たちが邪気を払う力があるとされている桃の弓や葦(あし)の矢を持ち、鬼に扮装した家来たちを追いかける鬼祓の行事です。室町時代になると、追儺式は庶民の間で広く行われるようになりました。豆まきがはじまったのは室町時代といわれており、中国明時代の風習が伝わったとされています。当時は、年男が「鬼は外、福は内」と言いながら、炒った豆を撒くというものが通例でした。地方によっては節分を「年取りの日」といって、この日にひとつ年をとると考えられており、年の数だけ豆を食べるという風習も、そこから生まれたといわれています。
2. 恵方巻き
恵方巻き(えほうまき)は、江戸時代末期頃、大阪を中心に流行ったといわれています。節分の夜にその年の恵方を向いて願い事をしながら無言で最後まで食べ切ると、ご利益があると考えられています。恵方巻きの具は様々ですが、七福神にちなみ「福を巻き込む」という意味を込めた7つの具が縁起良いとされています。また、太巻きを包丁で切るのは「福を途切れさせる」、「縁を切る」という意味になるので、1本をそのまま切らずに食べましょう。また、食べている途中に声を出したり、口から離したりすると「運が逃げる」といわれています。もしひとりで食べ切る自信のない方は、中太や細巻きなどの食べやすいサイズを選ぶと良いでしょう。また、恵方巻きは、お寿司屋さんをはじめスーパーやコンビニ、デパートの地下などでよく売られていますので、ご家庭で作らなくても手軽に美味しく行事を楽しむことができます。
恵方ってなに?
「恵方」とは、その年の福徳を司る神様である「歳徳神(とくしんじん)」のいる方角のことです。恵方が毎年変わるのは、歳徳神のいる場所が毎年変わるためです。歳徳神のいる方角に向かって物事を行うと万事が吉となるといわれており、昔の人にとって恵方は、節分に恵方巻きを食べる時だけではなく、初詣や初めてのことを行うときも、恵方の方向を用いるなど身近なものでした。
恵方巻きが全国に
広まったのはいつごろ?
現在では全国的に浸透している恵方巻きですが、実は、1990年代ごろからスーパーやコンビニが季節の行事食を商品化して、テレビコマーシャルなどの宣伝効果により急速に全国的に広まったといわれています。そのため子どものころの風習にはなかった方も多いでしょう。
3. 柊鰯
柊鰯(ひいらぎいわし)は、柊の枝に焼いた鰯の頭を刺したもので、鬼は鰯の焼いた時の煙の匂いを嫌い、柊のとがった葉は鬼の目を刺すといわれていることから、柊鰯は鬼が寄り付かせないための魔除けとして飾られるようになりました。西日本では、「焼嗅(やいかがし)」「やっかがし」「やきさし」などと呼ばれています。
柊鰯を飾ろう
1. 鰯を丸ごと、もしくは頭の部分だけこんがり焼きます
2. 焼いた鰯の頭部だけを取って、柊の枝に刺します
3. 玄関外の戸口に飾ります
地域別の風習や食べ物
実は節分の風習や食べるものは地域によって様々です。その中の一部をご紹介します。
▶鬼の豆もらい(香川県さぬき市志度)
地域の子どもたちが、近隣の商店街などを回り、鬼の豆といわれるお菓子をもらいに行くというハロウィンによく似た風習です。地元では平賀源内がはじめたと言い伝えられています。
▶砂下ろし(四国)
近畿。中国、四国などで、節分などの節目に食べるこんにゃくを「砂下ろし」といい、体内の毒素を排出するという意味や身を清めるという意味を持ちます。
▶くじら(山口県)
山口県では、「大きなものを食べると縁起が良い」という意味で、節分に大きなくじらが食べられるようになりました。また、「志を大きく」「大きく成長するように」との願いも込めて食べられているそうです。