春のお彼岸(春分の日)

春のお彼岸って、なにをするの?

お彼岸と聞いて、まず思い浮かぶのがお墓参りではないでしょうか。実際にお彼岸の時期には、お仏壇・仏具、お墓の掃除、お手入れなどを行い、ご先祖様の供養を中心に過ごすのが一般的です。
住宅事情などにより、自宅にお仏壇を置かない人が増えているかもしれませんが、ぜひ、お彼岸の期間中には、お墓掃除やお墓参りなどを行い、仏教的な世界観に触れてみるのもよいのではないでしょうか。
また、菩提寺がある人は「彼岸会(ひがんえ)」と呼ばれる法要が行われる際には、参加してみるのもよいでしょう。

CONTENTS
1. お彼岸にやること
2. お墓参りの作法
3. お彼岸の食べ物

1. お彼岸にやること

春のお彼岸は、春分の日を中日として、前後あわせて7日間です。仏教では、三途の川の向こう岸(彼岸)にあの世、こちらの岸(此岸:しがん)にこの世があり、それぞれ悟りの世界、と煩悩の世界に分かれています。川を挟んで此岸は東、彼岸は西に位置し、お日様が真東から上り真西に沈む春分と秋分は、あの世とこの世が最も通じやすい日とされ、ご先祖様の供養に適した日、すなわち、仏壇や仏具の掃除、お墓参りをする日となりました。
暑くも寒くもない気候の良いこの時期はお墓参りに出かけるには丁度良い季節でもあります。運がよければ桜も見られるかもしれません。

春分の日はいつ?

カレンダーを見ずにその年の春分の日が何日か答えられる人は少ないかもしれません。国民の祝日に関する規定(内閣府)によれば、春分の日は、法律で具体的に月日が明記されずに定められています。昼夜の長さが等しく、自然のあらゆる生命が若々しく盛り上がる時候であり、「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」として、昭和23(1948)年の国民の祝日に関する法律の制定当初に定められました。具体的な日にちについては国立天文台が、毎年2月に翌年の「春分の日」、「秋分の日」を官報で公表しています。

 歴史 

お彼岸のお墓参りは日本だけ!?

お彼岸の考え方は、仏教とともに古代インドから伝わったとされています。しかし、お彼岸に先祖供養やお墓参りをする習慣は、日本固有のものと見られています。日本式のお彼岸の起源は諸説ありますが、承和7年(840年)に記された「日本後紀」に、とある僧侶が春と秋の2回法要を行っていたというのが最古の記録ではないかと考えられています。一方で彼岸会と呼ばれるお彼岸の最中に行われる仏教行事の起源はもう少し古く、延暦25(806)年に朝廷の太政官から崇道天皇(早良親王)の怨念を鎮めるために五畿内七道諸国の国分寺の僧に、春分、秋分を中心とした7日間に金剛般若経(正式には金剛般若波羅蜜経)を読ませる命令が出たのが始まりとされています。

2. お墓参りの作法

お墓参りの服装は特にルールはありませんが、もし掃除や草むしりをするのであれば動きやすい服装で、お坊さんを呼んで法要をするときは、礼服か黒の喪服がふさわしいと思われます。最近は供花を売っていたり、掃除道具を貸してくれる墓地もありますが、最低限数珠や線香、ライター(風よけ付き)、供物は持参するのが良いでしょう。

お墓参りの手順

  1. 墓地に着いたらまず、手桶に水を汲みます。ご先祖様のお墓に合掌礼拝してから掃除を始めます。まず、墓周辺の雑草や枯葉、古くなった供花などを取り除きます。次に墓石に汲んできた水をかけ、柔らかい布やスポンジを使って汚れを落とします。同様に花立てや線香を置く香炉もきれいに掃除します。
  2. 大方汚れが取れたら、残ったきれいな水で墓石に水をかけましょう。古くなった墓石や灯篭などは崩れやすいので、水をかけるだけでも良いかもしれません。
  3. 花立てに水を入れ、供花を整え活けます。供物は白の半紙や懐紙に載せ、供えましょう。
  4. 線香を香炉に置きます。線香の数は、基本的には奇数で、ついた火は、口で吹き消さないのが作法です。手で扇ぐようにして消しましょう。
  5. お参りは、故人と縁の深い人からがよいでしょう。(数珠をかけ、)お祈りします。順番に一人ずつ、全員のお参りが済んだら終了です。掃除で出たごみや供物は必ず持ち帰るようにしましょう。

※宗教・宗派、地域によってお参りの仕方が異なる場合があります。

お供えするもの

お供えは、基本的にお仏壇でもお墓でも必要になります。五供(ごく)といって「お線香・お花・ローソク・お水(お茶)・食べ物」を基本にお供えしましょう。
ご自分の家だけでなく、他家へのお墓参りには、手土産(あるいは郵送)として、「日持ちするもの、小分けにしやすいもの」を念頭に、お供えを選びましょう。

他家へのお供え(よく贈られるもの)

  • 進物線香・ローソク
  • お菓子
  • 花(フラワーギフト)
  • 現金(香典)

3. お彼岸の食べ物

最近では実施する例は減りましたが、本来、仏教の行事であるため、お彼岸の時期に食すものは精進料理がふさわしいと考えられています。昔から「入りおはぎ(ぼた餅)に明け団子、中の中日に小豆飯(あずきめし)」ともいわれ、現在でもお彼岸の頃にはスーパーの店頭におはぎやぼた餅が並びます。
ここではお彼岸の行事食をご紹介します。

ぼたもち、おはぎ

ぼた餅とおはぎ、違いは何?といわれて、サッと説明できる人は少ないのでは。どちらも、もち米とあんこを使いますが、春はこしあんで牡丹餅(ぼたもち)、秋はつぶあんのおはぎという使い分けが一般的です。秋に収穫してすぐの小豆は、皮ごと食べられるのでつぶあんにするそうです。小豆は魔除けや邪気を払う効果があると信じられています。

精進料理

仏教行事ですので、殺生はせず、刺激の少ないものを食す精進料理。飯碗、汁椀、漬物に、精進揚げ(旬の野菜やキノコの天ぷら)などのおかずを加えた一汁三菜が基本です。

明け団子

お彼岸が明ける日に、串についた団子を供え、食します。その由来は諸説ありますが、あの世に帰るご先祖様へのお土産といわれています。

小豆飯

あらかじめ煮ておいた小豆と煮汁、そしてうるち米を一緒に炊きあげるか、ゆでた小豆を炊きあがったご飯に混ぜるかして作ります。なお、もち米に小豆などを加えてせいろで蒸した赤飯とは作り方から違っています。

彼岸そば、うどん

お彼岸は過ごしやすい気候であるとともに、季節の変わり目で体調を崩しやすい時期でもあります。消化のよいそばやうどんで、崩れた体調を整えるということから始まったという説があります。

同じ先祖供養の行事でもお彼岸とお盆は意味が違います。お彼岸は三途の川を挟んだ彼岸と此岸が最も近くなる期間であり、境目まで会いに来てくれる先祖のもとへお墓参りとして会いに行く行事です。他方、お盆はご先祖様をお迎えしてもてなすといった意味を持っています。これらの行事を通して、ご先祖様の存在に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?