元旦
知っていますか? 「元旦」のこと
1月1日、1年の最初の日の元旦には「年神様(としがみさま)」という神様が、1年の幸福をもたらすために各家庭に降りてくるといわれていました。今でもお正月を1年の始まりとして気持ちを新たにする人は多くいます。
幸福をもたらしてくれる年神様をお迎えして、祝うために、いろいろな正月行事や風習があります。門松、しめ飾り、おせち料理、鏡餅…年神様をもてなすための準備にも一つ一つ意味があります。ここでは、日本人が大切にしてきたお正月、元旦についてのさまざまな作法や豆知識をご紹介します。
CONTENTS
1. 元旦には何をするの?
2. 新年のご挨拶とは?(年賀状のルール)
3. 元旦(お正月)の食べ物
1.元旦には何をするの?
元旦や新年に初めておこなう行事は「初」という文字がつくものが多くあります。
初日の出
初日の出を拝むことが盛んになったのは、意外にも明治以降。新年最初の日の出とともに年神様が降臨するということで広まりました。特に高い山の山頂で迎える日の出を「ご来光」といいます。
初詣
もともとは住んでいる地域の氏神様にお参りするものでしたが、時代とともに地元の神社との地縁を感じにくくなり、ご利益を求めて、その年の年神様のいる方向「恵方」にある社寺や有名社寺に詣でるようになりました。
お年玉
年神様に供えた餅(鏡餅)を神棚や床の間から下ろし、分け与えたのが始まりです。年神様に供えた餅には年神様の御魂(みたま)が宿ると考えられており、これをいただき1年の活力とすることが目的でした。
若水
元日の朝に川や井戸から初めて汲む水のことをいいます。年神様に供えたり、お雑煮を作ったりします。さらに、これを飲むと、1年の邪気を払う効果があるとされています。
年賀状
新年をお祝いし、昨年の感謝と変わらぬお付き合いをお願いします。古くからある日本の習慣は、当初は先方に出向いていましたが、交際範囲が広がり、あいさつに行けない人などに手紙を送るようになり、年賀状は郵便制度の整った明治時代に急速に広まりました。最近は枚数が減り、メールに替える人も少なくありません。
書き初め
本来、事始めの1月2日に、新年の抱負や目標、健康や幸福を願う言葉をしたためるのが書初めです。平安時代に宮中で行われた行事で、年神様のいる恵方に向かい詩歌や祝賀を書いたことが由来です。また、1月2日書初めを行うと字が上手になるといわれています。
元旦と元日、その違いは?
元旦は1月1日の午前中であり、元日は1月1日の1日を表すとして使い分けることができます。
1年のはじまりの日、1月1日のことを元旦あるいは、元日といいます。文字は違っても意味は同じと理解している方が多いかもしれませんが、元旦は正確には元日の朝を示す言葉です。「旦」という字は、太陽を表す「日」が地平線を表す「一」から昇る様子を表しています。しかし、元旦を元日と同じ意味として掲載している辞書もあり、1月1日を元旦と呼んでも、誤りとは言い切れません。
いずれにしても、元旦・元日は日本人にとって大切な意味を持っています。
歴史
いつの世でも大切な一日
日本では、古くから歳神様(としがみさま)を元日にお迎えするための風習が行われていました。平安時代になると、これが無病息災や豊作を祈願して天地四方を拝む宮中行事、「四方拝」となり、定着しました。
四方拝は、明治以降から昭和初期になると「四方節」という国の行事になり、現在の国民の祝日につながる「四大節(四方拝、紀元節、天長節、明治節)」という祝日のひとつになりました。戦後に制定された祝日法によって国民の祝日と定められています。
2.新年のご挨拶とは?(年賀状のルール)
近年、メールやSNSの発達で、年賀状をやり取りする人が減ったといいます。実際に日本郵便の発表では2010年から2022年は発行部数が減少し続けているそうで、ピークの2003年に44億枚以上発行されていたのが、2022年には16億4000万枚と大きく枚数を減らしています。
自作の年賀状をプリントするなど、メッセージも自由度、多様性が増し、あいさつの形も様々になっており、年賀状をもらうとうれしいものです。きちんとした新年のご挨拶のルールを知っておいてもいいかもしれません。
賀詞とは
年賀状だけでなく、祝意を表す言葉を「賀詞」と呼びます。新年の賀詞としてはたくさんあり、それぞれ意味を持っています。
漢字一文字では ▶ 寿、福、賀、春など
漢字二文字なら ▶ 賀正、迎春、頌春、福寿、賀春など
漢字三文字だと ▶ 賀新春
漢字四文字で ▶ 謹賀新年、恭賀新春、長楽萬年、延寿萬歳など
文章なら
あけましておめでとうございます
新年おめでとうございます
謹んで新春のお慶びを申し上げます
謹んで年頭の御祝詞を申し上げます など
賀詞のマナーとしては、相手が目上の人の場合、「謹賀新年」などの四文字がふさわしく、友人や目下の人には四文字のご挨拶を簡略化した漢字一文字、二文字の賀詞を使います。日常的な感覚ではわかりにくいかもしれませんが、「寿」や「迎春」は礼儀に欠けると感じる方もおり、避けたほうがよいでしょう。
また賀詞に続く文章にも注意が必要です。「新年あけましておめでとうございます」は新年とあけましてが意味の重複があり、誤りとされています。「あけましておめでとうございます」「新年おめでとうございます」が正しい用例となります。
初夢のたのしみ
一富士二鷹三茄子とは初夢の吉兆ですが、初夢にその年の運勢が表れるとされたことから、毎年楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。夢の内容で新年の運勢を占ったり、良い夢を見るために宝船や獏の絵を枕の下に敷いたり、回文(前から読んでも後ろから読んでも同じ言葉)を唱えたりするのもお正月の楽しみの一つでした。
諸説ありますが元日の夜、2日の夜にみる夢を「初夢」とする双方の考え方があります。「一富士二鷹三茄子」は駿河の国(静岡県周辺)のことわざで、富士は日本一高い山、鷹は足高山(愛鷹山)のことで駿河で2番目に高い山、茄子は正月になると値段が高くなることから良い夢とされています。いずれも「高い」という縁起のよい言葉が入っています。
3.お正月の食べ物
お正月の食べ物はおせち料理やお雑煮など特徴的で年間を通じて他のシーズンに食べないものも多くあります。
おせち料理
おせち料理は、元来豊作を感謝し、神様へのお供え物として位置づけられていましたが、現代では縁起物の詰め合わせといった趣向であり、よい年になるよう願いを込めた料理が作られています。
【おせち料理に込められた意味や願い】
■一の重(祝い肴・口とり)
- 黒豆
まめは本来、丈夫や健康の意。語呂合わせで勤勉とも。まじめに、健やかに暮らせることを願う。 - 数の子
子宝、子孫繁栄を願う。ニシン(二親)の卵から多くの子が出ることから。 - 田作り
五穀豊穣を願って。片口イワシの小魚を肥料としてまいた田畑が豊作だったことから。 - 紅白かまぼこ
蒲鉾は日の出の象徴。めでたさや慶びを表す紅と、神聖を表す白。 - 昆布巻
「喜ぶ」の言葉にかけ健康長寿を願う。昆布巻きだけでなく煮しめの結び昆布なども。 - 伊達巻
伊達(おしゃれ)者の着物に似ていたことが名前の由来。文書や絵を巻物から知識が増えるように。 - 栗きんとん
黄金色の財宝にたとえられ、豊かな一年や金運を願う。栗は勝ち栗とよばれ縁起がよい。
■二の重(焼き物)
- タイ
「めでたい」の語呂合わせ。七福神の恵比寿様が持っている魚が鯛であることから幸福を呼ぶとも。 - アワビ
肉が伸びることから永遠を表すといわれ、鮑自体の寿命が15年から20年の言われていることから不老長寿を願う。 - ブリ
体が大きくなるごとに名前が変わる出生魚の代表。縁起がよく、立身出世ができるように願う。 - エビ
曲がった腰と長いひげが老人に見え、長寿を表す。目が出ているからめでたいとも。
■三の重(煮物)
- 煮しめ
根を張る根菜類から、末永い幸せを願う。たくさんの食材を一緒に煮ることから「家族仲よく」を表すとも。 - レンコン
穴が空いて向こうが見えることから将来の見通しがきくように。種が多いことから子孫繁栄も願う。 - サトイモ
小芋が多くつくことから、子宝に恵まれ、子孫繁栄を表す。丸いことから家庭円満を連想し面取りをせず調理する地域も。 - ごぼう
根を深くはり、成長力があることから、延命長寿の象徴として。家族が代々の繁栄を願う。 - しいたけ
陣笠に似ていることから壮健を、亀の甲羅に見立てて長生きを願う。かつては高級、ありがたみのある食材。 - 梅花にんじん
寒さに耐え早春に花開くことから清廉潔白で縁起がよいとされ、また花が咲くと必ず実を結ぶことから、めでたいとも。
■与の重(酢の物・和え物)
- 菊花カブ
冬が旬のカブを菊に見立てて飾り切り。菊は邪気を払い縁起がよいとされ、不老長寿の象徴とされる。 - 紅白なます
紅白はめでたさを表し、水引に見立てられることから、家族の平和を願うとされる。 - コハダ粟漬け
ブリと同じくシンコ➡コハダ➡コノシロとなる出世魚で縁起がいい。クチナシで黄色く染めた栗と一緒に漬け、五穀豊穣を願う。
雑煮
正月料理として定着したのは室町時代の後期といわれ、角餅にすまし汁、丸もちにみそ仕立てなど、具材や作り方、味漬けなどは、地域によってかなり違いがあるようです。
お屠蘇
一年の邪気を払い、長寿を願って飲む薬酒です。お屠蘇の「屠」には悪魔を屠る(ほふる、はふる)、「蘇」には魂を蘇らせるという意味があります。
お正月の歌をうたってみよう!
BGM : MMT38