重陽の節句

重陽(ちょうよう)の節句ってなに?

重陽の節句は中国から伝わった行事で、9月9日に菊の花を見たり、菊酒を飲んだりすることで不老長寿を願います。中国では、奇数のことを陽数といい、奇数が重なる日は縁起が良いと考えられていました。その中でも、一番大きな陽数「9」が重なる9月9日を「重陽の節句」と制定し、不老長寿や無病息災を願う日として親しまれるようになりました。また、旧暦では菊の花が見頃を迎える時期であることや、中国では菊は寿命を延ばし、邪気を払う力を持っていると信じられていたことから、別名「菊の節句」とも呼ばれています。

CONTENTS
1. 菊酒
2. 行事食
3. 伝統行事

4. 後の雛

1. 菊酒

冷酒に菊の花を浸したり、あるいは蒸した花びらを漬け込んだお酒です。重陽の節句に菊酒を飲む風習は、中国から伝わりました。平安時代には宮中の儀式として、菊酒を飲んで身体にある邪気を払い、不老長寿を願っていたそうです。

 歴史 

重陽の節句が中国から日本に伝わったのは、平安時代初期の頃といわれています。宮中行事の一つとして、貴族を中心に、中国から伝来したばかりの菊の花を観賞する宴「観菊の宴」を開いたり、菊を用いた厄払いを行ったりすることで、無病息災や不老長寿を祈願しました。江戸時代には、庶民の間にも広まり五節句の一つとして親しまれるようになりました。旧暦の9月9日は現在の10月中旬頃にあたり、菊の見頃や季節が移ろう時期として重んじられていた重陽の節句。明治初期に旧暦から新暦への改暦が行われたことで、夏の暑さが残り、菊も見頃にはまだ早い時期に移行することになってしまいました。しかし、季節の行事として現代でも秋の味覚を楽しむといった風習は受け継がれています。

2. 行事食

秋を感じる旬の栗と茄子を取り入れた料理を食べる風習があります。どちらも身近な食材ですので、ぜひ重陽の節句に取り入れてみてください。

栗ご飯

重陽の節句は、栗の収穫時期でもあったことから「栗の節句」とも呼ばれており、庶民の間では、栗ご飯を食べてお祝いしていました。

茄子料理

「9日に茄子を食べると風邪をひかない」という言い伝えから、「煮びたし」や「焼き茄子」などの茄子料理を食べて無病息災を祈ります。

「くんち」ってなに?

「くんち」とは、収穫を祝う秋祭りの総称の一つで、重陽の節句に行われたお祭りであることから、「くんち(9日)」という名前が定着したそうです。また、「くんちに茄子を食べると中風にならない」という言い伝えもあります。「中風」とは風邪の症状のことをいい「9日に茄子を食べれば風邪を引かない」という意味から、9月9日には茄子料理を食べて無病息災を祈る風習が生まれたそうです。

日本三大くんちって?

九州北部で行われる秋祭りの総称で、「長崎くんち」(長崎県)「唐津くんち」(佐賀県)「博多おくんち」(福岡県)のことを指します。毎年10月に、その年の収穫に感謝する規模の大きな秋祭りが開催されています。「くんち」はそのほか全国各地でも行われており、重陽の節句の習わしが作物の収穫祭として受け継がれています。お近くの地域の「くんち」に参加してみてはいかがでしょうか。

3. 伝統行事

重陽の節句には様々な行事が行われていました。

被せ綿(きせわた)

重陽の節句の前日に菊の花に綿を覆い、菊の香りを含んだ夜露をたっぷり染み込ませます。翌日、重陽の節句の当日に、その綿で顔や体を拭くことで老いが去り、長生きできるといわれていました。白菊には黄色、黄菊には赤、赤菊には白と、綿の色にも決まりがあるそうです。

菊湯・菊枕

菊の香りには邪気払いの力があると信じられていたことから、菊を湯船に浮かべた「菊湯」で入浴したり、乾燥した菊の花びらを枕に詰めた「菊枕」で香りをまとって眠る風習がありました。

菊合わせ

育てた菊を持ち寄って、美しさを競い合う催しです。現在でも各地で菊の品評会や鑑賞会が行われており、この風習が受け継がれています。

4. 後の雛

3月にしまった雛人形を再び飾る風習です。貴重な雛人形をしまったままにせず、傷みを防ぎ長持ちさせるための習わしで、江戸時代に庶民の間から広まったそうです。また、桃の節句は女の子の節句に対し、菊の節句である重陽の節句は「大人のひな祭り」ともいわれ、雛人形を飾り、大人の女性の健康や長寿を願っていました。

重陽の節句は、本来は五節句の中でも最も盛んに行われていた行事でしたが、新暦に入ってからは季節感が合わなくなったことから衰退し、馴染みのない方が多いかもしれません。ですが、栗ご飯や茄子料理といった身近な食材を使った行事食で、秋の味覚を楽しんだり、雛人形を飾ったりすることで、いつもとは一味違った秋を演出するのも良いですね。また10月から11月には菊が見頃を迎えます。菊酒を飲みながら菊の観賞を嗜むなど、菊を楽しむ風習を取り入れてみてはいかがでしょう。