ご祝儀・熨斗

ご祝儀、熨斗とは?

本来、祝儀とは「お祝い」の「儀式」、特に結婚式を指す言葉でしたが、次第にその儀式のときに贈られる金品を指すようになりました。お祝いの行事の際に、お手伝いやお世話をしてくれた方に対して渡される心付け、という意味で使われることもあります。慶事の祝儀に対して、ご不幸の儀式や贈り物は、不祝儀(ぶしゅうぎ)になります。一方、熨斗(のし)とは、結婚の内祝いなど、儀礼的な贈り物に添えられる飾りを指します。ここでは結婚におけるご祝儀と、熨斗について記していきます。

CONTENTS
1. ご祝儀を渡す準備
2. 祝儀袋(熨斗袋)の書き方
3. ご祝儀の相場
4. ご祝儀のタイミング・渡し方
5. 結婚の内祝い・お返しと熨斗 内祝いの選び方

1. ご祝儀を渡す準備

結婚のご祝儀は、熨斗(のし)袋に入れ、結婚式当日に渡すことが多いものです。ご祝儀は、もともとは挙式前に品物でお祝いを渡すものでしたが、今では当日に現金を包むことがほとんどとなりました。今でも、結婚式に出席できないなどの事情がある人など、結婚式の前にプレゼントやお金を贈る場合もあります。
ご祝儀を渡すために、まず祝儀袋を用意します。結婚祝いの祝儀袋は「熨斗」と「水引」がついているものを。
熨斗は、かつては縁起物として鮑を薄くのばして乾燥させたもの(のしあわび)を添えていました。これが「のし」という名前の由来といわれています。現在は簡略化されて紙を折った飾りか印刷となります。
水引は、ご祝儀袋にかけてある飾り紐をいい、結び方、色、本数が何をお祝いするかによって決められています。結婚祝いの場合「あわじ結び」や「結び切り」を使います。一度結べばほどけにくい結び方で、「繰り返し結ぶことができないように」という意味から、結婚のご祝儀に用いられます。逆に「蝶結び」の水引は、5本か7本の奇数で構成され、ほどいて結びなおすことができるため、「何度あってもよい」という意味のお祝いに用います。そのため結婚のご祝儀に使っては失礼となります。水引の色は結婚の場合、金と銀、あるいは紅白で細い紐が10本のものを選びます。

また、のし袋の外袋の折り方も、慶事と弔事で異なりますので図でご確認ください。(慶事は下の折り返しが前に来るように、弔事は上側の折り返しが前に来るようにします。)

 歴史 

神様への贈り物がはじまりに 

ご祝儀はご祝儀袋=熨斗袋に入れて金品を贈りますが、そのスタイルは、日本における贈答の歴史であり、日本古来の神道に始まります。神様の食べ物(神饌物)としてお供えの農作物や魚介類を和紙で包み、白い紙縒り(かみより)の束で結んで奉納していました。
現在の「熨斗紙」のもとになっているのは、鎌倉~室町時代の頃、宮中の礼法に定められた金品の包み方で、贈り物を白い和紙で包み、水引で丸結び(結切り)した「反物包み」といわれています。
江戸時代、武家様式の礼法が定まり、贈答の方法も新しく変わります。それ以前は慶弔の区別がなかったものが、「結ぶ水引の色」により区別されるようになりました。明治以降になると、庶民の間に広がるとともに簡素化され、かつては本物の鮑を使っていた熨斗鮑も紙製の折り熨斗へと変化し、現在の祝儀袋の様式になりました。また、印刷技術の発達とともに、一枚の紙に水引と熨斗が印刷された熨斗紙も誕生しました。

 2. 祝儀袋(熨斗袋)の書き方

表書きとはもともとは、熨斗袋や熨斗紙の上段に書かれる、贈り物の名目を指していましたが、現在では表面に書く名前も含めて呼ばれたりしています。入学、成人、出産といった一般的な祝い事には「御祝」、結婚のお祝いには「寿」、「御祝」、「御慶」、「御結婚御祝」などがあります。市販の祝儀袋にはすでに印刷されているものが多くありますが、ご自分で書く場合には、熨斗や水引に掛らないように書きましょう。祝儀袋を買うと、「寿」などが印刷された短冊が入っていることが多く、その半分より下側に、送り主の名前を書きます。
名前は上書きの「寿」などよりも少し小さめの文字で書きます。夫婦の連名なら、中央に夫の名前、左側に妻の名前を書きましょう。

職場の同僚の連名なら役職順に右から左へ、特に順番がなければ五十音順、人数が多い場合は「○○一同」「有志一同」のようにまとめて記載しましょう。

中袋・中包み

中袋・中包みには表側の真ん中に包んだ金額を書きます。「金」のあとに少し間隔を開けてから金額を書き込むとバランスよく見えます。裏側には送り主の住所と氏名を書きましょう。金額の後に「也」を書くかどうかは、「10万円以上の場合は書きこむ」など諸説ありますが、正式な金額の表記としては也をつけるのが古くからの正式なマナーでした。「銭(せん)」や「厘(りん)」という単位を用いていた時代に、金額を追記されないように円の後ろに也と書くようにしていましたが、現代では金額の書き足し防止の必要はないので、也をつけないことも増えています。同様の理由で、漢数字の「一、二、三」などは、書き足すことで数字を増やすことができるため、書き足しができないような、「壱、弐、参」のように書かれていました。また、「伍、拾」なども古くから用いられています。また、「万」は「萬」、「千」は「仟」、「円」は「圓」と書くことが多いです。

3. ご祝儀の相場

まずマナーとしてご祝儀は新札で用意しましょう。お札は表向きに、人物が上になるようにして入れます。さらに金額にも注意が必要です。「4」や「9」は「死」「苦」を想起させるので、お祝いでは避けるべきです。また、特に結婚のお祝いでは、偶数が「割れる、別れる」を意味するので、避けたいところです。ただ、最近では「2」を「2人=ペア」という認識も広がり、2万円でも嫌がられないことも多くなっています。偶数の中では「8」も末広がりの意味を持つので例外とされています。
ここでは、今どきのご祝儀の相場をご紹介します。

(一社)全日本冠婚葬祭互助協会 祝儀(結婚祝い)等に関するアンケート調査(平成29年度)

会費制の結婚式

ご祝儀ではなく、招待客から一律の会費をもらう会費制の結婚式を選ぶカップルが増えているようです。結婚式の費用を抑えたい、ゲストの経済的負担を軽くしたいといった理由から、会費制が増えているという側面があるようです。従来のご祝儀制の結婚式と参加の仕方に違いがあるかといえば、大きな違いはお祝いの金額かもしれません。ご祝儀は3万円というのがよくいわれる結婚披露宴の相場ですが、披露宴やパーティー、二次会を会費制にした場合は、10,000円から15,000円が相場となります。ご祝儀ではないので、祝儀袋に入れず、お金を直接受付の方、幹事の方にお釣りの無いように渡します。会場によっては服装などよりカジュアルになる場合もありますが、晴れの日、お祝いの席であることに配慮して、セミフォーマルが無難です。

4. ご祝儀のタイミング・渡し方

結婚式当日、ご祝儀をいつ渡したらいいのか迷ってしまうことがあります。実は新郎新婦との関係により渡すタイミングが変わることがありますので、ご注意ください。

親族や親せき

親族の場合は、付き合いの程度によりますが、結婚式の前に渡しておくのが良いでしょう。目安は1カ月前~1週間前までとなります。立場として招待する側になるので、受付でご祝儀を渡すことは控えましょう。ただし、結婚式の当日受付するときに、事前に渡してある旨を伝えましょう。受付の方も安心できます。

友人・知人や同僚

現在のマナーとしては結婚式当日、受付で渡すのが一般的です。新郎新婦に直接お祝いを述べながら渡したいという意向があるかもしれませんが、結婚式当日はなにかと忙しく、分刻みのスケジュールで動いている場合もあるので、控えましょう。
挙式と披露宴のいずれも出席する場合は、披露宴の受付でお渡しするのがよいでしょう。

続いて、ご祝儀の渡し方ですが、ご祝儀袋が汚れたり折れたり、しわになったりしないよう袱紗(ふくさ)に包んで持参します。結婚式などの慶事で使う袱紗は、赤系統の暖色系や白などもあります。紫色の袱紗は慶事にも弔事にも使えるので便利です。紫は昔から高貴な色とされ、相手への最大限の礼節を表すため慶弔両用できます。なお、慶事と弔事では、袱紗の包み方が異なるため、そちらも注意すると良いでしょう。また、包み方を気にせずに使える袋タイプのものもあります。紺や緑などの寒色系は忌事用ですのでご注意ください。
袱紗に包んだ祝儀袋を男性は上着の内ポケットに、女性ならハンドバックに入れ、受付の前に立った時初めて袱紗を開きます。畳んだ袱紗にご祝儀袋を載せるようにして、受付の方に袋の正面が向くように両手で渡します。

左:【慶事】右開き/右:【弔事】左開き

ご祝儀袋に書く金額の
数字は大字?

最近は漢数字でもよいとされていますが、祝儀袋の金額は大字(改ざんできないように用いた昔の漢数字の呼び方)で書くのが一般的です。
よく使う大字を以下にご紹介します。(四と九は縁起が良くないとされているので省略します。)

5.結婚の内祝い・お返しと熨斗

結婚祝のお祝いをいただいたときは、「内祝い」をお返しして感謝のしるしとするのが一般的です。では、どのように贈れば良いか、詳しくはこちらをご覧ください。

ご祝儀はお祝いの気持ちを金品に変えて贈るものなので、祝儀袋や熨斗紙に書く文字は心を込めて丁寧に書くことで、相手に思いが伝わります。筆や筆ペンなど慣れていないとなかなか上手には書けませんが、苦労して書いた文字が味わい深くなったりもしますので、挑戦してみては。もちろんサインペンでもマナー違反には当たりません。グレーの薄墨(うすずみ)はお悔やみ用ですのでご注意ください。